バラク・オバマ大統領が正式に誕生した。1月20日、ワシントンでは大統領就任式が開かれ、首都には全米から200万人とも言われる聴衆が詰め掛けた。
就任式に参加した、おそらく唯一の日本の政治家、松沢成文・神奈川県知事に現場の様子を聞いた。
「私は、オバマ大統領から30メートルくらいの場所にいました。その場所から振り返れば、約5キロ先のワシントン・モニュメントの方まで、聴衆がぎっしり埋まっていました。たった一人の政治家のために、これだけの人間が集まる凄さが米国にはあります。しかも、北朝鮮や中国などのように、政府が集めたわけでもない。全米中から、この歴史的瞬間に立ち会おうと自主的にやってきた人ばかりです」
さぞ、想像を絶する光景だろう。200万人といえば、栃木県、群馬県、福島県などの各県の総人口に相当する。その人数が一箇所に集まり、ひとりの男のスピーチに耳を傾けたのだ。
冬のワシントンの寒さは厳しい。就任式当日の気温は氷点下8度。招待客の松沢知事ですら、その中で6時間も待たされたという。一般の聴衆はおそらくもっと長い時間、寒さに耐えていたのだろう。
だが、それでも、米国の新たな歴史を刻もうとする政治家の言葉を直接聞きたい、そういった気持ちで多くの米国民がワシントンを目指した。それがきのう(1月20日)のオバマ大統領の就任演説だったのだ。
オバマが信頼する
若きスピーチライター
とはいえ、11月のシカゴでの「勝利宣言」のような興奮はなかった。だが、今回のスピーチも、総じて評判は悪くないようだ。ニューヨークタイムズやWSJの論説でも、「グリーン・ニューディール政策」や「イラク撤退」など具体的な政策を盛り込んだことが好意的に扱われていた。
当然のことだが、そのスピーチは、オバマ大統領ひとりによって作られたものではない。
今回の演説もシカゴでの「勝利宣言」と同様、スピーチライターたちによって草稿されたものである。スピーチライターたち、と複数であるのは、通常米国では、大統領職には何人ものスピーチライターが付くことが多いからだ。オバマチームの責任ライターは、ジョン・ファブロー。27歳の若者で、剃髪にジーンズ、そして“ブラックベリー”を駆使する典型的な今どきの若者だ。