先週16日、日本電産(東証1部/大証1部上場)が、東洋電機製造(東証1部上場)【以下、東洋電機】に対し、買収提案を行なったことを発表。それを受け、東洋電機の株価は、17日、18日と2日連続で買い気配によるストップ高で売買不成立に。3日目の19日にようやく売買成立となったものの、市場で大きな話題となった。
徹底した哲学で
手堅い買収を続けてきた日本電産
これだけ市場が反応したのには理由がある。それは今回、買収を仕掛けたのが“M&Aの達人”といわれる日本電産の永守重信社長であったからだ。日本電産はこれまで27社におよぶ企業買収を行なっており、いずれも会社再建に成功。27連勝といわれ、連戦連勝を続けている。
永守氏率いる日本電産が行なってきたM&Aの最大の特徴は、“哲学”がはっきりとしていること。それはひとえに同社の得意分野である「モーター」周辺事業であることに尽きる。関連性のあるものしか買収せず、たとえ関連性があったとしても、シナジーが上がる見込みのない会社は決して買収しないという、徹底した姿勢を貫いてきているのである。
さらにもう1つの特徴は、そのほとんどが「救済型」の買収であったこと。経営不振に苦しむ企業自身、または親会社、メインバンクなどから“頼まれて”買収を行ない、会社を建て直すというスタイルである。
その手法を使った成功事例の1つが、2003年に行なわれた三協精機製作所(現:日本電産サンキョー)の買収だろう。三協精機は以前、ベアリングメーカーのミネベアから敵対的買収を仕掛けられたが、その対抗措置として新日鐵をホワイトナイトに立てて買収を回避。大株主・新日鐵のもとで経営再建を目指したもののうまくいかず、結果的に日本電産が引き受けることになった。その後、大幅に業績を回復し、2005年に日本電産サンキョーに社名変更。正式に日本電産グループの一員となっている。まさに絵にかいたような成功事例である。
このほかにも、日産自動車系のトーソク(現・日本電産トーソク)、東芝系の芝浦電産(現・日本電産シバウラ)、日立系の日本サーボなど、技術力に定評のある名門企業を次々に傘下に収め、自らの経営力で業績を大幅に伸ばし、日本最大のモーターメーカーグループを築いている。
「救済型」から一転、
初めての「同意なき買収提案」に
このように、常に確実で手堅い買収を行なってきた日本電産。しかし、今回の東洋電機への買収提案は少し様子が違っている。それはいったい何か――。