スティーヴン・D・キング
高インフレ率と共存しようとしたブラジルの末路
1970年代、ブラジルのインフレはいっそう加速していたが(卸売物価は年率約37%上昇した)、正直なところ誰がそんなことを気にするだろう? ブラジルの経済は、従来の経済的思考を180度覆してしまったように見えた。しかし、ブラジルの運(実際、運だった)もそこまでだった。

インフレとは「隠れた税金」であり、政府はその誘惑に耐えられない
インフレは、いわば隠し球のような方法で市民に課税するメカニズムであり、通常は、たとえば増税のように、その他の歳入確保の手段が政治的に望ましくない場合に使われる。

ドイツのハイパーインフレで大富豪になった人物
議論の余地がないのは、ハイパーインフレの最中、彼が夢にも思わないような大金持ちになった、ということだ。すでに正真正銘の国際実業家になっていたシュティンネスは、強い外国通貨を担保に独マルクの借り入れを行った。いわば、巨額の補助金を受け取って事業利益を追求しているに等しい状態だった。

インフレ下で資産を守るための6つの格言
バーンズとボルカーの体験が物語っているのは、投資家はインフレの政治経済的な側面に対して細心の注意を払わなければならない、という点だ。答えを持たない投資家たちは、不確実性に加え、潜在的に巨大な変動性に対処する、という厄介な問題に直面する。いくつかの格言を覚えておくといいだろう。

MMT信者がインフレ期に決まって口にすること
インフレが実際に姿を現わすと、MMTの支持者たちは、インフレ全般を抑制するかわりに、より問題のある分野(最たる例はエネルギー分野)の需要を制限するか、供給を押し上げることが解決策になる、と主張することが多い。

デフレしか念頭のない世界に、インフレが帰ってきた
インフレの再来は、世界経済の発展にとって一種の分水嶺といえる。この30年間の大半の時期を通じて、政策立案者と投資家はいずれも、デフレの危険性のほうにずっと目を光らせていた。

インフレ期に値上がりする資産・値下がりする資産
インフレ期には、いわゆる「実物資産」に投資するのが最善策である、という主張をたびたび耳にする。この主張は正しいが、あくまでも相対的な意味での話だ。それはインフレが債券や現金に対して及ぼす壊滅的な影響を物語るものであって、その他の資産の絶対的なメリットを物語っているわけではない。

インフレは「勝ち組」と「負け組」を気まぐれに生む
短期的な政治的観点から見れば、インフレは一種の逃げ道とみなすことができる。いわば、貯蓄を持つ人々に対して「こっそりと」課税する手段だといっていい。

なぜインフレ下だと高級外車が爆買いされるのか
「車好き」たちにとっては、急速に価値が目減りしていく国内通貨の上に座して待つよりは、少しずつしか価値が目減りしていかない外国資産を保有しているほうが得策だった。何がなんでも「富」を守りたい人々にとっては、洗濯機や高級車を貯蔵するのは魅力的な選択肢だったのだ。
