「複数の活動」を最後までやり通す

 ゲイツ財団の寛大な支援を得て、私は1200名の高校3年生を対象にアンケート調査を実施した。ウィリンガムの研究と同様、「なにか課外活動を行っているか(行っている場合は、具体的に回答する)」「課外活動を行っている場合は、どのような実績を収めたか」について、質問を行った。

 この調査に使用した表は、格子(グリッド)状であることから、研究所ではしだいに「グリット・グリッド」と呼ぶようになった。ウィリンガムの研究事例にならって、私の研究チームでは「複数年におよぶ活動」(2つまでカウントする)と「実績」を数値化することでスコア(評価点)を算出した。

 具体的には、2年以上行った活動がある場合は、ひとつにつき1ポイントを獲得する(1年しか行っていない場合は0ポイントとなり、その時点で計算作業は終了)。

 複数年にわたって活動を行い、そこで何らかの実績を収めた場合は(生徒会の役員を1年務めたあと、翌年は会計係を担当するなど)、2ポイント目が加算される。

 最後に、実績が著しく顕著な場合は(生徒会長を務めた、バスケット部のMVPや月間最優秀スタッフ賞を受賞したなど)、3ポイント目が加算される。

 以上の評価点を合計すると、生徒たちは最低0ポイント(複数年にわたる活動がひとつもない場合)から最高6ポイント(複数年にわたる活動がふたつあり、その両方で優れた実績を収めた場合)を獲得することになる。

 結果は予想どおり、グリット・グリッドで高い評価点を獲得した生徒たちは、「やり抜く力」も強いことがわかった。また、教師たちについても、同様の結果が見られた。

 そのあとは、しばらく期間を置いた。

 アンケート調査に参加した生徒たちの大半は、高校を卒業後、全米各地の大学に進学した。調査の2年後、1200名の参加者のうち、短大もしくは大学に在籍していたのは、わずか34%だった。そして私たちの予想どおり、グリット・グリッドのスコアの高い生徒たちほど、在籍率が高いことがわかった。

 グリット・グリッドで満点の6点を獲得した生徒のうち69%は、2年後も在籍していた。これに対し、6点中0点だった生徒のうち、2年後も在籍していたのは、わずか16%にすぎなかった。

 私たちは別の研究でも同じグリット・グリッドを用いて、新人教員たちを対象に、大学時代の課外活動に関する調査を行った。その結果は驚くほど酷似していた。

 新人教員のうち、大学時代に複数の活動を最後までやり通し、実績を収めた人は、教職を辞めずに続ける確率が高いだけでなく、生徒たちの学力を向上させる能力も高いことがわかった。

 いっぽう、新人教員の過去のSAT(大学進学適性試験)やGPA(成績平均点)のスコアや、リーダーシップ能力に関する面接評価などは、教員としての粘り強さや能力との測定可能な関係は、まったく見られなかった。