「つい子どもをほめてしまう」という問題
「学習性勤勉性」に関するアイゼンバーガーの研究論文を初めて読んだ当時、長女のアマンダは幼児で、次女のルーシーはまだ赤ちゃんだった。娘たちに対する自分の接し方を振り返って、私は反省した。私は学習に必要な条件をつくっていなかった。つまり、「がんばったらごほうびがもらえる」(「がんばらなければ、ごほうびはもらえない」)というルールを、子どもたちに認識させる環境をつくっていなかった。
子どもにとって望ましい適切なフィードバックを与えることが、私にはなかなかできなかった。娘たちがどんなことをしても、ついほめてしまった。「グリット」(やり抜く力)を鍛えるのに課外活動が効果的な理由のひとつは、まさにこの点にある。コーチや教師たちは、他人の子どもたちを預かって「グリット」を引き出すのが仕事だからだ。
娘たちを毎週送り迎えしたバレエ教室には、素晴らしい先生がいた。先生のバレエへの情熱は、生徒たちにもしっかりと伝わった。親の私と同じくらい子どもたちのことを思ってくれたが、私よりもずっと厳しかった。
たとえば、レッスンに遅れてのんびり教室に入ってくる生徒がいると、先生はその子だけでなく全員に、「ほかの人の貴重な時間をムダにしないように気をつけなさい」と厳しく注意した。また、レオタードやバレエシューズを家に忘れてきた生徒には、教室の片すみでレッスンを見学させ、その日は最後まで練習に参加させなかった。
また、生徒がまちがった動作をしたときは、細かく指導し、納得のいくレベルに達するまで、何度でも繰り返し練習させた。ときにはレッスンの最後に、先生がバレエの歴史について短い講義を行い、バレエダンサーの一人ひとりが、伝統を受け継ぐ責任を担っていることを子どもたちに説明した。
厳しすぎる?そうは思わない。
要求のレベルが高い?それはまちがいない。
だからこそアマンダとルーシーは、家庭よりもむしろバレエ教室で貴重なことを学んだのだ――興味を掘り下げること、うまくできないことも一生懸命に練習すること、自分ががんばっていることには個人の枠を超えたより大きな目標があると認識すること、そして、苦しい日々のあとには素晴らしい日々がやってくることを信じて、何度でもやってみよう、と希望を持つことを。