「コンプライアンス担当」的な
専門職は危ない

 コンプライアンス担当者は、現在複雑でかつニーズの高い仕事をしているのは事実だ。また、現在、彼らには、自分たちが自ら自分たちの仕事への社内需要を生み出すことができるという強みがある。例えば、「コンプライアンスの観点から、こうした研修が必要です。やらないことは、当行にとってリスク要因です」とコンプライアンスに言われて、「うちには、そんな研修はいらないよ」と言い返せる経営者は、銀行ばかりでなく、金融界には少ないのではないか。

 とはいえ、コンプライアンスの仕事の大きな部分は、法令と前例に依拠した判断に基礎があり、年月と共にデータが蓄積される。これを使って「判断」するシステムは、AIなどと呼べるほどに大げさなものでなくとも、かつて「エキスパートシステム」と呼ばれていた知識データベースのシステムを高度化して、インターフェースを改善した程度のもので、相当程度代替できる可能性がある。高度・複雑で、AIに置き換えにくい業務のようでいて、案外早く置き換えが進む可能性があるのは、「コンプライアンス担当」のような知識データベースへの依存が大きい専門職ではないだろうか。

 あるいは、高度な「コンプライアンス・エキスパートシステム」の使い手が少数いるなら、今まで多人数必要だったコンプライアンス業務の必要マンパワーが一気に激減するかもしれない。

 AIの発達は、AIが人間に完全に取って代わる前の段階で、個人間に巨大な生産性の差をもたらすことが考えられる。

 例えば、「AI弁護士」的なシステムを巧みに使うことができる弁護士が、普通の弁護士の100倍の能率で仕事ができるとするなら、この一人の弁護士が100倍近い仕事と収入を得て、その煽りを食って90人以上の弁護士が失業ないし、底辺的収入に追い込まれる可能性があるだろう。

 一般論として、AIの発達は、(1)生産性を上げるけれども、(2)個人間の格差を拡大するので、(3)経済政策としては今後『再分配』が重要になる、と考えている。

 なお、コンプライアンス担当よりも簡単にAIに置き換えられて、よりスッキリなくなってしまいそうな金融関連の仕事としては「ファイナンシャルプランナー」(FP)が考えられる。彼らの資格は独占業務を持っていないし、知識と計算によって答えが出る分野が専門性の中核なので、将来はかなり厳しいのではないか。22職種のランキングでは、7位と比較的上位だが、筆者なら、もっと上に順位付けする。

 太いお客をがっちり持つ特別に営業に強いFP、個人へのコンサルティングに強みを持つ人生相談FP、といった「対人(顧客)関係に強い」少数のFPだけが、FPとして生き残るのではないかと、筆者は予想している。

 それにしても、「コンプライアンス担当だけが最後に残る金融機関」というのは、実にシュールな未来予想図だ。