松沢成文(まつざわしげふみ) 神奈川県知事 1958年神奈川県川崎市生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科卒業後、(財)松下政経塾に、第3期生として入塾。1987年、県政史上最年少議員として初当選。以後、国会議員をつとめ、2003年3月には神奈川県知事に当選。現在、2期目を務める。 |
今日、国政の混乱と改革の停滞は極まっている。早急に抜本的な政治・行政の構造改革を断行しなければ、国民の福祉が損なわれ、我が国の将来の繁栄が失われるおそれがある。この国のかたちそのものを大改造しない限り、もはや、日本の再生は望めない。この閉塞状況を打破するために、今求められているのは100年を見通した国の構造改革なのである。
地方分権改革は、こうした事態を打開するために必要かつ不可欠の処方箋だが、これまでのような諮問機関による検討や官僚組織との交渉をいくら積み上げても、大きな成果は期待できない。これは、第一次地方分権改革、三位一体の改革などを経ても中央集権体制は全く変わらず、むしろ地方の疲弊を招いたことからも明らかである。
こうした事態を繰り返さず、抜本的な地方分権改革を進めるためには、発想を転換して、政治主導により思い切って道州制の実現を図るしかない。
道州制こそが、霞が関の解体と地方分権改革を同時に実現し、地域主権型社会を創ることができる究極の構造改革であり、公務員改革、議員削減、教育や福祉の改革など、さまざまな分野の課題解決を図る突破口となる。
さらに、道州制が実現すれば、道州間の善政競争が進み、それぞれの地域特性を生かした国際競争力のある産業を育てることで、日本再生の道が開ける。これこそが日本の低迷と危機を乗り越える切り札となる。
そのためには、各政党のマニフェストに「道州制基本法」と「道州制推進法」の制定を明記させることが、現時点では最も有効な手段である。「道州制を推進します」といった漠然とした記述ではなく、実現の方法と期限を明記し、法律とその具体的な内容を国民に提示し、制定を約束することで、実現に向けての担保となる。これらの法制定は、霞ヶ関の官僚の力を借りずとも、「政治の力」で実現が可能であり、道州制を確実に進める枠組みが完成するのである。
総選挙が迫ったこの時期、細かな技術論を展開している暇(いとま)はない。国民に広がる閉塞感を打破し、我が国の政治・行政の大変革を促すために、政治家が大局観をもってリーダシップを発揮し、どう行動するかを決断すべき時である。