領土問題、TPP問題が足かせに?
APECにおける菅首相の“誤算”

 横浜で開催されたAPECは、経済統合への道筋をより明確にするなど一定の成果をあげて閉幕した。

 ただ、会議の成果や評価が、そのまま開催国、議長国である日本政府の成果や評価になっているわけではない。

 APEC開催のために働いた多くの人の努力は高く評価されるが、それが菅直人政権の評価には結びついていかない。

 APECを起死回生の舞台と期待していた菅首相も、期間中から浮かぬ顔を見せ、政権浮揚の決め手にならなかった無念さを感じさせる。

 大きな誤算は、折角の米・ロ・中との首脳会談が領土問題含みにならざるを得なかったこと。本来なら、議長国として会議のテーマに沿った首脳会談にすべきだったが、領土問題に加えて、TPP参加についても党の内外からブレーキをかけられて思い通りにならなかった。こんな環境も他ならず、菅首相自身が招いたものだ。

会談での弱々しい態度が
ロシア、中国の強い発言を引き出す

 さて、首脳会談、特に日ロ、日中の会談を見て思ったのは、なぜ菅首相は、握手のときや重要発言のときに相手の目を見据えないのかということ。

 思い出すのは、小泉純一郎首相が最初にピョンヤンを訪れて金正日総書記に会ったときのこと。遠くから近づいていく間、一度も目を逸らさず進み、握手のときは相手を射抜くように見据えていた。その迫力には金総書記も圧倒されたに違いない。私はそのテレビ映像を見て、「会談は大丈夫だ」と安心した。

 菅首相は握手でも会談でも目を逸らしていることが多く、相手を見るときも実に弱々しい感じがする。

 目を逸らす人の印象は万国共通だ。自信がない、こわがっている、本気ではない、うしろめたいところがある。そんな印象を持たれると結果的には相手の強い発言を引き出すことになる。今回の日ロ首脳会談はそんな感じがした。ロシア側が言いたいことを言う場をわざわざ提供したようなものだ。