違法に高い金利で金を貸す「ヤミ金融」。いま、都内のある司法書士事務所には、ヤミ金に手を出したという主婦の相談が相次いでいる。この事務所では夏以降、ヤミ金の相談件数が急増し、ひと月で100件を超えた。
ヤミ金の特徴は、違法に高い金利、一例を挙げると、5万5000円借りて、2ヵ月で利子が16万5000円。元金の返済がなかなか終わらないといったように、法定金利を遙かに超えた悪質なものばかり。
この日、ヤミ金の被害にあったという女性に話を聞くと、お金を借りた理由は「家賃支払い」のため。彼女のように、ヤミ金に手を出した理由の多くは、生活費など切実なものだという。
また、ほかのヤミ金利用者に取材を進めると、主人には打ち明けられないと語る主婦、友達をなくすのが嫌で仕方なくヤミ金に電話したと言う女性など、家族や友人にも頼れず、ヤミ金に手を出す主婦たちの姿が浮かび上がってきた。なぜ、主婦たちは家族にも秘密で、違法なヤミ金に走るのか――。
夫に借金を打ち明けられない
Aさんのケース
「借りたくても借りられない主婦が増えている」という話を聞いたわれわれ追跡チームは、先月、1人の専業主婦に出会った。40代のAさん、会社員の夫と小学生の息子の3人暮らしだ。
これまでAさんは、医療費など突然の出費の際にクレジットカードで借金をしてきた。しかしいま、ATMキャッシュコーナーでカードを入れてみても、表示されるのは「ご利用できません」という画面のみ。いつ頃からこうなったのか聞くと、最近だという。これまで滞納したことは一度もない、と語るAさん。なぜ借りられなくなったのか。
その原因は今年6月、完全施行された「改正貸金業法」。この法律は、クレジットカード会社や消費者金融から次々に借金をし、多重債務に陥る人を減らす目的で作られたもの。この法律により、借り手は年収の3分の1を超えての借金ができなくなったのだ。よって、収入がない専業主婦は原則借金ができなくなる。借金をするためには夫の同意をとることが条件となるが、しかしまだ、Aさんは夫に相談できていない。
夫の年収は400万円台。Aさん自身は病気もあって働くことができないため、生活費はいつもギリギリ。貯金をする余裕はない。そのため、子どもの夏期講習など急な出費の際は夫に内緒で借金をしてしのいできた。
「自分が病気がちで働けないという後ろめたさもあり、給料をきちんと持ってきてくれる夫にお金が足りないとは言えなかった。やりくりが悪いと思われたないし、自分と結婚して貧乏くじを引いたとも思われたくない」
とAさんは語る。結局いまだに借金のことを打ち明けられずにいる。
いま、クレジットカード会社には、Aさんのように「借金ができなくなった」という主婦の問い合わせが殺到。カード会社や消費者金融のなかには、主婦への貸し出しを止めるところも相次いでいる。法律の改正で手続きが煩雑になり、コストに見合わないからだ。
法律の改正によって借金ができなくなる主婦やサラリーマンの数は、業界団体の調査を元に計算すると、およそ500万人にのぼると推定されている。
そもそも、貸金業法の改正にはどんな背景があったのか。