図の中の日本の値は、厚生労働省の国民生活基礎調査の3年毎の大規模調査時のデータにもとづいているが、国内では発表されていない生産年齢人口のジニ係数が掲載されている点に独自の価値がある。高齢化にともなって退職後の所得が相対的に低い世帯が増えるので、ジニ係数も上昇に向けたバイアスがかかる。そこで、高齢者を除いた人口集団でジニ係数を計算すれば、高齢化の要因を取り除いた格差の状況が分かるのである。

 なぜか、国内発表では、前々から知りたかった高齢層を除いたジニ係数が提示されていなかったので、私は、たまたま、OECDのデータベースでこれが記載されているのを知って溜飲を下げたことを思い出す。

 図を見れば、主要国では、いずれの国でもジニ係数が上昇傾向にある点が明確である。主要国の中でも最もジニ係数が高い米国では、1980年代以降、継続的にジニ係数が上昇している。ドイツやフランス、そして福祉先進国として知られかつては非常にジニ係数が低かったスウェーデンでも、最近は、格差拡大が無視できない状況となっている。

 一般には、冷戦終結(1989年)後のグローバリゼーションの進展とともに経済の自由競争が過熱し、その結果、経済格差が拡大しているという見方がああり、移民や難民の増加とともに、こうした国内格差の拡大が、各国でネオナチなどの排外主義的な政治潮流の台頭の背景になっているともいわれる。

 日本も同じ道をたどっていると一般には思われているが、果たして、そうであろうか。

元々高かった格差水準が
最近落ち着いてきている

 図中の日本のジニ係数には2つの特徴がある。

 まず、水準自体が低くない点が重要である。日本は、従来、平等な国だったが、最近、格差が拡大して住みにくい国になったという論調が一部に見られるが、このデータでは、少なくともバブル経済に突入する以前の1980年代半ばには、すでに、スウェーデンばかりでなく、ドイツやフランスを大きく上回り、米英に次ぐ高いジニ係数の水準となっていた。もし日本の格差水準が高いとしたら、以前から高かったと考えねばならないのである。

 また、ジニ係数の動きをよくみると、日本の場合、2000年をピークに、どちらかというとジニ係数は、横ばい、あるいは微減傾向にあると捉えることができる。特に、高齢化要因を除いた生産年齢人口でのジニ係数はこの点がより明確である。他の主要国がジニ係数を上昇させる傾向にあるのとは対照的なのである。

 すなわち、日本の場合、低かった格差水準が最近高くなったのではなく、元々高くなっていた格差水準が最近落ち着いてきているのである。この点について、さらに、たんねんに見ていくため、ジニ係数ではなく、所得格差についてのもう1つの指標を、次に、取り上げよう。