表情という「情報」を相手に渡す

 最後に、私にとって「史上最悪」の面談のお話しをしておきたいと思います。
 いまだに、私にとって忘れられない「最悪」な面談でした。

プレゼンするときは相手の「左目」を見て話せ!

 半期に1回行われる上司との面談の日。私は風邪をひいていて、マスクをしていました。体もだるかったのを覚えています。
 そんななかで、予定の時間が来て、面談をする部屋に呼び出されました。
 そして、上司からは「そこに座って」と、真正面の椅子に座らされました。

 面談が始まりました。
 私としては、いたって普通に話しているつもりでしたが、どうも上司の言葉がいちいち喧嘩腰なのです。私の言っていることも、まったく上司に伝わらない。最終的には、「お前はちょっと、何を考えているかわからないから、日を改めてまた面談しよう」と、その日の面談を切り上げられてしまいました。

 私は何が相手の気分を害したのかすぐにはわかりませんでしたが、のちになって思い当たることがありました。マスクです。私の顔の半分はマスクで隠されています。口元が見えないので、笑っているのか怒っているのかもわかりません。加えて体調を崩していますから、目にも覇気がありません。

 しかも、座る位置も上司の正面です。
「喧嘩上等」の座り位置で、口元を隠し、目からも感情が読み取れない男が、目の前で日々の業務について淡々と話している。上司には、その姿がどのように映ったか?大げさに言えば、ゲバ棒を隠し持った「反体制分子」と面談しているような気持だったのではないでしょうか(笑)。それでは、和やかな面談になどなりえません。

 この経験から、私は何を学んだか。
 情報量が少なければ少ないほど、相手は警戒してしまい、心を開いてはくれないということです。ここでいう「情報」とは、プレゼン資料としての情報だけではありません。「提案者の表情」も立派な情報です。それが欠けるだけで、相手を説得するどころか、話すらまともに聞いてもらえないという状況が生まれてしまうのです。

 これは、テレビ会議などでも実感できることです。テレビ会議で喧々諤々の議論をする。だけど、何か足りないように感じないでしょうか?何か足りない感じがして、相手の言うことに100%納得できない。決断を求められても、どうにも腹が固まらない。そんな感覚を覚えたことのある人は多いと思います。それは、情報量が足りないからです。双方向コミュニケーションをとる上で、映像を介してしまうと伝わる情報が限定的になってしまうから、納得感が得にくいのです。

 プレゼンは人間と人間のコミュニケーションです。何かを提案したいときには、企画を練りこんだり、資料をつくりこんだりするのはもちろん大切ですが、ワンランク上を目指すためには、「人間のものの感じ方」のメカニズムを意識することが大事。それが、「一発OK」を勝ち取る重要なポイントなのです。11月2日に開催する「ダイヤモンド社プレミアム白熱講座」では、これを実感していただけると思います。どうぞ、楽しみにしてください。