なぜ、借金・補助金は危険なのか?
一般的にゼロから起農しようと思ったら、1000万円かかると言われています。
稲作農家はその倍です。
そこで借入れ資金制度(借金)や国からの就農支援制度(補助金)を使うのが一般的ですが、果たしてそれでいいのか?
と思いました。
今の農業は固定資産の塊です。
農業機械の場合、田畑で活躍する時間より納屋で寝ている時間が圧倒的に多いのが、なんとももったいなく感じました。
そこで、極力所有を少なくし、ムダをなくせないかを考えました。
その結果、風来では前述のとおり初期費用を143万円に抑えることができました。
「小さい農」ならではのことですが、もちろん借金なし、補助金なしです。
補助金をもらわなければ、お上意識を持つこともないので、精神的に自由です。
そして、この自由さが多様性につながっていきます。
今、新規就農者支援金などは、とても充実しています。しかし、もらえるものはもらったほうが得だと、その資金でスタートした農家が次々リタイアしていくのをどのくらい見てきたことか……。どうしても補助金は、甘えを誘発してしまいます。
補助金に頼らざるをえない場合は、その原資は税金であることを認識し、将来、税金でしっかり返すぐらいの気概がないと成功するのは難しいでしょう。
差別化を図る「無農薬」&「無肥料」栽培
風来では、起農当時から「無農薬栽培」です。
こちらは戦略というより私自身、食の安全性に興味があったからなのですが、まさしく素人農業、しかも当時は今ほど資材も栽培技術も発達していない中で、いきなり無農薬栽培に挑戦しました。当然、失敗の連続です。
うまくいっても収穫量は慣行栽培(化学肥料・農薬使用の一般的栽培方法)の7割、資材費は1.5倍なのに、無農薬だからといって、思ったより高くては売れません(せいぜい慣行栽培の1.2倍まで)。正直言って労多くして手元に残るものは少ないのです。
しかし、ネット販売や自店舗販売にシフトしていくと、差別化でき有利になります。
また「野菜セット」があることで、それを入口に、漬物や手づくりお菓子もついで買いしてくれるので、看板としての役割は大きいものがありました。
現在では、そんな無農薬栽培を経て、「炭素循環農法」(無肥料栽培)を全面採用しています。
当初苦労したのですが、有機無農薬栽培の頃と比べて虫がつきにくく、病気にもなりにくいため、防除作業が軽減されました。これにより、肥料代がかからず、コストもそれまでの5分の1以下になりました。
しかも安全性も高いということで、自信を持って販売できるようになりました。
こういった農法が出てきたこと自体、すごいことだと思いますし、大きな差別化が図れています。