富裕層ビジネスの成功を考える時、画一的なマスマーケティングは通用しない。では、どういった手法が有効なのか。その1つとして「富裕層コミュニティマーケティング」が有効と考える。富裕層を研究していくと、彼らの多くは何かしらのコミュニティに属していることが多い。そのコミュニティとは、会員制のクラブだけに留まらず、趣味や嗜好、価値観といったように、有形・無形での富裕層同士の結びつきであったりする。それらコミュニティの情報を収集し、それぞれのコミュニティとしっかりとした関係を持つことが、富裕層ビジネスの成功に向けた有効な手段の1つとなり得る。もちろん、富裕層一人一人にリーチをかけていくことも必要であるが、企業にとって費用対効果の面で疑問が残る。その場合、有効となるのが、富裕層コミュニティの探索とそこへのアプローチである。
そこで今回取り上げるのは、「PAVONE」という富裕層向け雑誌を発行している、KPクリエイションズ代表の小柳幸子氏。小柳氏は「PAVONE」を通して、その読者でもある富裕層に多くの楽しみや満足感を与えながら、読者を中心としたコミュニティを作り上げることに注力している。小柳氏のビジネスモデルの中に、今後の富裕層ビジネスを成功に導く糸口があるのではないかと考え、話しを伺った。
(聞き手/船井総合研究所:小林昇太郎、撮影/蛭間勇介)
ビール営業から印刷会社営業を経て
富裕層向け雑誌を創刊した女性起業家
――小柳さんには研究会や会報を通して同じ“富裕層ビジネス”というテーマを追究するパートナーとしてご尽力いただいております。これまでにオテルドゥミクニでの立食パーティーやシンガポール視察を共催し、非常に良い関係性を持って一緒にお仕事をさせていただいていますが、まずはそのきっかけとなったPAVONE誌創刊に至るまでの小柳さんのキャリアや経緯を簡単にお聞かせいただけますか。
私はもともと宮崎の出身で、実家が創業から73年続く宮崎県内でも老舗の印刷会社なんです。そこでずっと生まれ育って、大学進学をきっかけに上京しました。そして学生時代は明治大学の商学部で、特にマーケティングを勉強していました。
大学卒業後はビール会社に就職して、ビールの営業をやっていました。総合職で営業に配属になった女性は2人しかいなくて、しかも東京勤務は私1人だけという職場環境でした。朝7時には出社して夕方17時に会社を出て、その後は夜の街に繰り出して6~7件営業廻りするという…そういう仕事をしていました。もともと九州の出身でお酒は強いんですけどね(笑)。
――体育会系でバリバリお仕事されていらっしゃったのですね。それがどういうきっかけでキャリアが変わっていったのでしょうか。