日本では「欧米に留学する人は一流、日本には欧米に行けなかった人が来るのだろう、と思い込んでいる人もいると思いますが、必ずしもそんなことはないですよ」と教授はつけ加える。「日本に来る留学生は、確かに中国の進学校で1番だった、という超一流ではないかもしれないけれど、日本の住みやすさや日本文化を理解し、日本で落ち着いて勉強したいという性格の中国人で、そこそこのエリート。強いていうなら、1.5流といってもいいでしょう」

 つまり、多くの中国人が行きたがるアメリカではなく、あえて日本を選ぶ人は、激しい競争を好まない、控えめなタイプが多い。トップにはなれなくても、常にコツコツやるがんばり屋さんに向いているといえる。自分の専門分野に合った教授が大学にいるかどうかなど、自分にとって重要なポイントとなることをいくつか天秤にかけて、冷静に留学先を日本に定めている人が多いという。

アメリカには中国人が多すぎる
日本留学はまだ希少価値

 数年前、東大修士課程を修了後、アメリカの博士課程に進学した上海出身の男性も、同様の意見を言っていた。

「アメリカには中国人が多すぎて、アメリカ留学したメリットを感じにくくなっているのが現状です。そこで勝ち残っていくためには、少なくともトップ10以内の大学で優秀な成績を収めること。さらに、学力や努力以外のもっと別の才能や強力なコネも必要。運も深く関係しますね。アメリカで思い描いたようなキャリアを得られず、かといって、中国に戻って錦を飾ることもできないで、そのまま雲隠れしてしまう残念な“エリート崩れ”も数多くいます」

「それに比べると、日本留学は、アメリカ留学に比べて人数が少ないので、9万人もいるとはいえ、まだ希少価値なんです」

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 希少価値というと「えっ? こんなに多いのに?」と日本人は思うが、『爆買い』中国人観光客同様、総体的に見れば、中国人は日本よりも欧米に行くことのほうが圧倒的に多く、まだまだ日本の魅力、日本留学のよさが中国人に完全に伝わっているわけではない。

「今、日本に留学している中国人は、他人を押しのけてまで、という、まるで中国人の専売特許のような“戦闘モード”があまりない。日本に住んでいると日本のお国柄に似てくるのか、礼儀正しく、いい意味で“日本人化”している人が多いと思います」

「日本ならば、最も進んだ研究分野で教授の右腕となることも可能だし、日本の研究者とのネットワークの構築もできる。何しろ同じ東洋人同士で、中国人と日本人は考え方が似たところがありますから。アメリカ留学に幻想を抱く中国人もいますが、日本留学にはアメリカよりもよいことがたくさんあり、日本は魅力的な国。そう考えている人が多いからこそ、今、日本を目指す中国人エリートが密かに増えているのではないでしょうか」