ドイツは経済成長を重視しながら、同時に債務の削減も行ってきた。財政規律を憲法にまで盛り込んだ厳しさは欧州の他の国も学ぶべきところがあろう。ドイツの現財務大臣が提言する。

Wolfgang Schäuble(ヴォルフガング・ショイブレ)
ドイツ財務大臣。1942年フライブルク生まれ。98年から2000年までドイツキリスト教民主同盟(CDU)の党首を務めた。メルケル政権の下で05年内相。09年より現職。
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 国際通貨基金(IMF)によれば、金融危機をきっかけにG20諸国が2009年に提供した金融部門への支援措置が合計でGDPの1.7%(9050億ドル)に達した。それに対し、裁量的な財政刺激策は09年、10年ともGDPの2%に達しているという。ユーロ圏では、ルクセンブルクとフィンランドを除くすべての国が、09年に対GDP比3%を超える財政赤字を計上している。ギリシャ、スペイン、アイルランドでは10%を超える赤字となっている。単年度で、ユーロ圏各国政府の抱える債務は、約10%ポイントも増大したことになる(08年は対GDP比69.3%、09年は同78.7%)。

 ドイツの場合、10年の連邦予算では500億ユーロを優に超える過去最高の赤字を計上している。公的部門の累積債務は1.7兆ユーロを超え、GDPの80%近くに達する見通しだ。ドイツの連邦予算の10%以上を食いつぶしている国債利払いは、債務の拡大に伴い増加する。金利が上昇すれば、その増加ペースはさらに加速する。

 だが、金融危機とその後の景気後退は、こうした債務比率の高さを説明するにはほど遠い。欧州諸国・G20諸国の国民の多くは、収入に見合わない暮らしをしている、というのが真実である。財政規律の手本とまでいわれたドイツでさえ、その例外ではない。

 好況期においてさえ、各国政府はあまりにも長期にわたって、歳入以上の支出を続けた。おそらくさらに悪いことに、いくつかの国では、高齢化ゆえに長期的な成長ポテンシャルが低下していることを考えれば容易には返済できないほどの歳出を続けてしまった。こうした浪費が、手をこまねいていては持続不可能な状態に陥りそうな債務水準をもたらしてしまった。