「EDは血管病の予兆とも考えられます。なぜなら、中高年でEDになった人の約6割が、数年後に心筋梗塞や脳梗塞等になったというデータがあるからです。これらの血管病は動脈硬化が進んだことによって引き起こされるのですが、その進行はまず細い血管から詰まることから始まります。陰茎に血液を送る血管の太さは直径1mmぐらい、対して心臓に血液を送る冠状動脈の血管は直径3mmぐらい。EDになるということは細い血管が詰まってきた証拠、つまり血管病のサインです。なので、奥様には、主人が倒れてしまわないよう、生活習慣を改善し、病気の予防に努めてくださいとお願いしています」
EDの陰に大病あり。かつて、ED治療の特効薬「バイアグラ」が登場したころ、「腹上死」の話題が飛び交ったことがあったが、その裏には、こんな事情があったのだ。中高年でEDになった人は、心臓ドッグや脳ドックを受診し、将来の重大疾病予防に備えることをおススメする。
性欲の不一致は当たり前
妻は我慢しているかもしれない
さて、直子さん、正毅さん夫婦はその後、どうなったか。
名医から、夫婦でよく話し合うよう諭され、帰宅したところで、直子さんは想いを大爆発させた。
「ネットや男性週刊誌では、性交渉がなくなると妻が悲しむとか、怒るとか言ってるけど、私はぜんぜんそんなことありませんからね。あなたが愛読している週刊Gとか週刊Pとかじゃ、『死ぬまで夫婦でセックス万歳』なんて特集してるけど、とんでもない。そんなのは男社会が作り上げた幻想よ。私も、私のお友だちも、手をつないだり、ハグされたり、そんなスキンシップのほうがずっと幸せを感じるの。勃起や挿入ができなければ男じゃないとか、妙なこだわりはもうやめて。そんなことできなくても、私はあなたを尊敬しているし、ずっと一緒にいたいと思っているの」
一気にまくしたてられ、絶句する正毅さん。
(そりゃあ、男らしさへのこだわりもあるけれど、俺はセックスが好きなんだ。お前を抱きたいんだ! でも、こうまで言うからには、治療薬をもらって勃起できたとしても、相手をしてくれそうもないな。困ったな)
頭の中で、計算高く考えをめぐらせ、しばらくは黙っていようと決めた。
長年連れ添った夫婦でも、こんなふうに性欲はすれ違う。
よく離婚原因に「性欲の不一致」があげられるが、高齢になったらむしろ、一致している夫婦の方が珍しいということを、特に男性には、覚えておいてほしい。
あなたが気づかないだけで、妻は我慢しているかもしれないということを。