販路を限定するのは
“値崩れ”を防ぐため

パナの新型TVリモコンが販路を限定する理由エイジフリー社は、(1)介護サービス事業、(2)サービス付き高齢者向け住宅事業、(3)介護ショップ事業、④介護用品・設備の開発および販売事業などを手広く扱う。パナソニックの方向性にも一致する 写真提供:パナソニック・エイジフリー社

 もっとも、新型リモコンの性能が高いことは理解できても、気になる点がいくつかある。

 まず、シンプルな見た目の裏側に技術力があるとはいえ、価格の設定を高めにしている点がある。

 次に、2つのタイプを合わせて「17年度以降に年間2万台の販売を目指す」と、ようやく巻き返しに出る製品でありながら、目標を低く抑えているところである。

 最後に、販売ルートを全国各地のエイジフリー社系列の販売店、関係が良好な介護用品店、一部の大型病院などへの直販ルートなどに限定していることだ。

 ズバリ言って、これらの施策の背景には「値崩れを防ぎたい」との企業の意思がある。大手量販店ルートには流さず、ある程度までコントロールできる専門家が相手の商流に限ることによって、いち早く製品ブランドを確立する。要するに、価格競争に巻き込まれずに済む特別なポジションの獲得に的をしぼっているのである。

 戦略商品というのは、そういう意味だ。仮に、障がい者・高齢者のベッドの脇にあるTVリモコンと置き換わるだけの支持が得られれば、エイジフリー社は「競合のいない空間」に入り込める。いったん利便性が認められれば、そのまま使い続けてもらえるのだから、潜在的なポテンシャルは大きい。

 今後は、大手量販店などの店頭で、見た目のシンプルさだけを真似た類似商品が現れることになりそうだが、自分たちの製品よりも性能が劣る割安のコピー製品が先に世間に広まっては元も子もなくなる。だからこそ、まず介護関連業界で「障がい者・高齢者向けの特別な製品」として価格ごと認知させようとしているのだ。それまでに、エイジフリー社はどこまで介護関連市場で確たるプレゼンスを得ることができるか――。

 世界最高水準の性能を持ちながらも、安価なコピー製品の台頭で割を食ってきた感がある日本企業にとって、売り方で好事例を提供してくれそうな新製品である。

(「週刊ダイヤモンド」編集部 池冨 仁)