例えば65歳で引退するとして、現在の中高年(40代以上)は計算上「念のため95歳までの30年間」くらいで良さそうだが、その子供である現在の小学生以下の世代ではやや余裕を見て「105歳までの40年」くらいを老後として想定しておく必要があるだろう。現役期間を同じとすると、現役時代に3割以上余計に貯蓄しなければ辻褄が合わないし、日本の場合ほぼ確実に、他の先進国でもおそらくは、公的年金の支給額は将来減少するので、「将来への備え」の負担はさらに重い。

 試しに筆者の方式で計算してみると、22歳から65歳になるまで42年働いて、65歳から105歳になるまでの40年間を「老後期間」として、老後期間に現役時代の平均の0.7倍の生活費で暮らしたいとしよう。公的年金が将来の現役世代の25%程度をカバーすると見積もると(現在の約半分の実質価値だ)、必要貯蓄率は可処分所得の約25.7%と計算される。

 これは、いささか重かろう。同じ条件で、75歳まで働くことにして現役を10年延ばして、老後を10年短縮させると、必要貯蓄率は約18.5%になる。これでも楽ではないが、少し現実的になる。80歳まで働くとすると、約15.1%だ。長寿化の現実がお分かりいただけようか。

現役期間を延ばして
より高齢まで働くこと

「人生設計の基本公式」を見てもらうと分かるが、現役時代の過重な必要貯蓄負担を軽減するには、(1)現役期間を延ばす(同時に老後期間が縮む)、(2)老後の生活レベルを落とす、(3)共稼ぎや副業などで収入を追加する、(4)子どもの教育費など現役時代の生活コストを削減する、(5)資産の運用で稼ぐ、といった方策がある。

 これらのうち、(2)の老後の生活費を小さく見積もって「大丈夫だ」と思い込むことや、(5)の資産運用に大きく期待することは、『ライフ・シフト』でも、良くないとされている(筆者も同感だ)。

 対策の本命は、必然的に、現役期間を延ばして、これまでよりも高齢まで働くことになる。幸い、同じ年齢で比較すると、かつての高齢者よりも今の高齢者の方が、また、おそらくは将来の高齢者の方が今の高齢者よりも、元気である。

 ただし、現在よりも長い現役期間を現在のビジネスパーソンのように働くことを想定すると、(1)ハードに長期間連続して働き続けると疲弊する、(2)現役期間が長期化するとスキルが陳腐化しやすい、(3)自分が選んだ企業や業種が現役期間をカバーするだけ延命できるか不確実だ、(4)現役時代にまとまった余暇や追加教育の時間がなくていいのか、といった問題が生じる。