現在、欧州の7~9月の経済成長率(GDP伸び率)は1.4%と悪くない。2017年の予想も1.5%となっている。理由の一つはドイツの経済成長率が1.9%と高いこともある。EU離脱で紛糾している英国もポンド安のため観光と輸出が伸び、今期はマイナス成長かと考えたが0.5%の成長率になっている。
日本と比べて、そこそこに見えるが、英国のEU離脱、南欧の財政悪化など、欧州を取り巻く状態は良くない。しかし、よく見ると、昔から変わらない基本的な経済的な構造がいつも見えてくる。この構造を知っていると欧州経済に対してより理解が深まることになる。
4つのグループに分けて
欧州を捉える
筆者は欧州について考えるときに、以下の様な4つのグループに国を分けて考えている。
(1)ゲルマン系:ドイツ・オランダ・ルクセンブルグ等
(2)ラテン系:フランス・イタリア・スペイン・ポルトガル等
(3)北欧系:英国・デンマーク・スウェーデン・ノルウェー等
(4)東欧系:ポーランド・チェコ・ハンガリー・ルーマニア等
まず、ゲルマン系とラテン系の関係であるが、経済や産業の分野において随分違う。車などの産業(製品)を見ると感触としても分かると思うが、ゲルマン系はドイツをはじめとして経済が強く、ラテン系はやや弱い。また、物価に関しても、ゲルマン系は厳格に物価(インフレ)管理をしており、ラテン系はインフレになりやすい傾向がある。そのためユーロ導入前の通貨統合の準備期間でも、“常に”ゲルマン系の通貨は強く ラテン系の国々が弱く、為替レートはよく“股裂き”の状況になって制度が破綻することとなった。
現在も、イタリア・スペイン・ポルトガルなどが、財政赤字や高失業率に苦しんでおり、さらに金融機関の経営状況も悪い。財政赤字はユーロ圏の基本法・リスボン条約に決められたGDP対比の財政赤字率、3%を突破する(余談だが、この規定は日本にこそ必要なものである)。また、相変わらず経済を改善できないギリシャもこのグループに入る。
このような国の性質について、以前、フランクフルトにいた時に、引退したドイツ連邦銀行(ドイツ・ブンデスバンク)のシュレジンガー元総裁に教示いただいた。彼はエコノミスト出身であり、「それを“メンタリティ(mentality)”というんだ」と言って、経済分析に使っているとのことであった。