おそらく残業の少なさでは
5本の指に入る

小室●日本の職場では「全員健康で毎日、会社にい続ける」ことが前提だったんだと思うんです。部長なり課長なりが、いつでも対応できることを前提とした仕組みの職場が非常に多かった。

このまま残業を放置していたのでは、<br />日本企業は負けてしまう。ではどうするか。 小室淑恵(こむろ・よしえ)
株式会社ワーク・ライフバランス代表取締役社長
900社以上の企業へのコンサルティング実績を持ち、残業を減らして業績を上げる「働き方見直しコンサルティング」の手法に定評がある。『労働時間革命 残業削減で業績向上! その仕組みが分かる』(毎日新聞出版)など著書多数。自身も2児の母として子育てをしながら効率よく短時間で成果を上げる働き方を実践。産業競争力会議民間議員など複数公務を兼任

 自分がいないときも回る形のマニュアルにまで落として、みたいな必要性を感じなかったし、感じさせないようにしていたんでしょうね。意地でも席をどかない、くらいの空気があったのではないかと思います。

佐々木●僕が現役の頃も、そういう上司はいましたね。人より早く会社に行って、人より遅く帰る。部下についても、長く残っている人が一生懸命やっているように見える。

小室●暗黙の評価基準みたいなものですよね。

佐々木●そうですね。実は僕は、さっさと早く帰ってしまう人間だったんです(笑)。同期入社が400人くらいいましたが、おそらく残業の少なさでは5本の指に入っていたと思います。

小室●それは素晴らしい。私は、これから偉くなる人は、残業しない人なんだと、いつも講演会で紹介していまして、佐々木さんのこともこれから紹介させてください。

佐々木●どうぞ、どうぞ。残業というか、会社にいないといけないという気持ちはなかったですね。技術屋ですから、成果が出りゃいいじゃないか、という。会社にいれば考えている、会社にいなければ考えていない、というわけでもないわけですし。

小室●まさに。

佐々木●気分転換になりますしね。でも、上司には評判はあまり良くなかった(笑)。呼びつけようと思っても、もういないし(笑)。

小室●「おい」と言ったら、「はい」と言ってくれる部下が正直言ってかわいい、という管理職はまだたくさんいます。。それによって疲弊してしまって、クリエイティビティが落ちていったり、自己研鑽する時間がなくなったりしたら、本来は本末転倒だと思うのですが。

佐々木●そうだと思うんですけどね。ただ、会社にいなかったからって、勉強しているわけではなかったですが(笑)。遊び回っていました(笑)。

小室●会社に残っていたのではできないインプットと、人脈形成をされていたんですね。

 弊社のクライアントで残業削減に成功した企業の業績が最近、とても良いんです。セントワークスというIT企業では利益率が146%になったり、三重県の従業員54人の調剤薬局エムワンでは医薬品の売り上げが230%になったり。

 リクルートスタッフィングさんでは生産性が4%向上して、休日労働は86%削減でき、社員の家庭に生まれる子どもの数が1.8倍になりました。損保ジャパンでは、働き方改革の結果、勉強する時間を確保してTOEICが200点アップした若手が、念願の海外赴任を実現させたケースもありました。

 人口ボーナス期のように時間が成果に直結する時代ではないので、各自がインプットを増やし、職場に多様性を内包しないと、高い付加価値を生むことが出来ないんですね。