育児で休む女性より、
介護で休む男性が多い

小室●今は本人がどんなに毎日健康で、24時間会社に貢献したい、と思っても、必ずしもそうはいかなくなることがありうる、という状況になっていることを多くの人に知ってほしいと思っています。例えば、介護を理由に時間の制約を持つ方が本当に増えている。

佐々木●そうですね。

小室●私たちには「介護と仕事の両立ナビ」というサービスがあるんですが、最初にこのサービスを導入したのは、大手建設会社さんでした。そしてその会社では2014年から、既に育児で休んでいる女性の数よりも、介護で休んでいる男性のほうが、多くなっています。

 男女比で非常に男性が多く、転勤も多いので、結婚している女性は30代で、辞めてしまう。

 そうすると、40代、50代はオール男性、その男性たちに親の介護が始まれば、育児女性より介護男性のほうが多くなるのです。

 ワークライフバランスを整える仕事というと、数年前まで女性支援の会社だと勘違いされていました。「うちは育児で休む女性のために会社側が合わせようなんてつもりはないんでね」という反応をいただくことが過去は非常に多かったんです。

佐々木●そうなんですね。

小室●でも、今はもう介護で男性が休んだり、辞めそうになったりしている現実が増えてきている。特に幹部候補生で育ててきたような方が親の介護で、というケースも少なくない。特に独身で来られてきた方の場合は、誰かにお願いする先もない状態になります。

 問題の本質をもっと早く、強い危機感をもって捉えてほしかったんですが、残念ながら女性の話だとなかなかそうはいきませんでした。ところが、会社の幹部候補生の男性も対象となる話だとなった瞬間に、強い危機感を持って「働き方改革」に取り組む企業が増えました。

 佐々木さんが監修された本のような、本当に機能するマニュアルを作り、属人化を排除し、工程を目的に合わせて最初から作り込むという必要性は、ますます高まってきていると思います。

 人頼みではなく、組織としてやらないといけないんだというところに、ようやく本腰が入ってきたかな、ということを感じます。

佐々木●そうでしょうね。そうしないとおそらく、成り立っていかないと思います。