ライオン株式会社の提供するiPhoneアプリ「@トイレ」、およびその受験生版「@トイレカレッジ」が好評だ。緊急事態、つまり急に下痢を催した際に、近くにあるトイレを探すことができるサービスだ。いずれも「Presented by ストッパ」となっており、同社の下痢止め薬「ストッパ」の宣伝を兼ねている。
世は、まさに受験シーズン真っ盛り。インフルエンザや交通機関の遅延など、受験生にとって怖いものは多いが、「突然の下痢」は最も恐ろしいものだろう。実際、同社の調査によると「空調」や「眠気」などを抑え、受験生の心配事のトップとなっている。
こうした緊急事態は、季節を問わず、ビジネスマンにとっても脅威である。遅刻できない会議、失敗の許されないプレゼンの連続で、「毎日が受験生状態」という人も珍しくない。だからこそ「@トイレ」やクスリの需要もあるわけだが、そもそ下痢の原因について考えてみることも必要だ。現代病とも言われる「過敏性腸症候群」が、今回のキーワードである。
アステラス製薬の推定によると、日本における過敏性腸症候群の患者は、約1200万人にも上るという。日本人の日常的な下痢、慢性的な下痢のほとんどは、過敏性腸症候群によるものと考えてよい。
過敏性腸症候群の主な原因は、精神的ストレスである。前述のように多くのビジネスマンがストレスフルな生活を送っているし、さらには「いざというときの下痢」への恐れ自体もストレスとなり、下痢を引き起こすというから、厄介だ。ストレスが引き金となる症状を抑えるには、ストレッサーをなくせばいいのだが、それが難しいからこそ、「1200万人が悩む現代病」と言われるのだ。
この現代病、根本的な原因を取り除けないまでも、対処法はある。大切な瞬間に便意を催さないために3時間前までに食事を済ませておく、緊急事態が起こっても対処できるよう約束の場所へは早めに向かう、といった心がけは、気持ちの余裕につながる。
そして「クスリ」だ。むやみに下痢を止めてはいけないという常識が定着しつつあるが、それは細菌やウィルスがらみの場合。過敏性腸症候群による下痢は(トイレに行く時間がないのなら)、止めてもよい部類のものである。「クスリを携帯しているから大丈夫」という安心感も効く。
それでも事態が改善しないのなら……。近年では、過敏性腸症候群に特化した病院も増えていることだし、思い切って診察を受けてみてはどうだろうか。便通の異常を自覚している人の60%が、何の治療も受けていないとのデータがある。
「忙しい」「病院へ行くほどではない」という自己判断なのだろうが、診察を受ける(病気であることを認める)ことでストレスが軽減されるケースもあるし、実は腸炎やポリーブだったと判明して、かえってすっきりすることもあるのだ。焦りは禁物だが、何事も早めの対策が吉である。
(工藤 渉)