言葉を持たないと
部下指導はできない
――和田さんが、メモ魔になったきっかけは何だったんですか?
京都生まれ。作家、和田裕美事務所株式会社代表、光華女子大学キャリア形成学科客員教授。営業力・コミュニケーション力・モチベーションアップのための講演・コンサルティングを国内外で展開している。小学生のときから通知表に「もっと積極的にお友だちとお話ししましょう」と書かれ続けたほど引っ込み思案な性格にもかかわらず、上京後は外資系企業の営業職に就く。当初はおどおどして相手の目を見て会話することもままならず、長い間つらく厳しい下積み時代が続いたが、独自の「ファン作り」営業スタイルを構築し、試行錯誤を重ね、徐々にプレゼンしたお客様の98%から契約をもらうまでになる。それによって日本でトップ、世界142ヵ国中2位の成績を収めた。その経験から「考え方」と「行動」で運命はいくらでも変えられるのだと実感し、自分が行っていた思考パターンを「陽転思考」として確立する。女性ビジネス書の先駆けとして大きな反響を呼んだ『世界No.2セールスウーマンの「売れる営業」に変わる本』(ダイヤモンド社)がベストセラーになる。ほかに『成約率98%の秘訣』(かんき出版)、『和田裕美の人に好かれる話し方』(大和書房)など著書多数。最新刊は『幸せなお金持ちになる すごいお金。』(SBクリエイティブ)
和田 言葉を持たないと、人を指導できないと感じたからです。ボキャブラリーと表現能力をできる限りインプットしたくてメモ魔になりました。
田島 素材集めをされていたんですね。
和田 そう。ただ集めるのではなく、それらを自分なりの言葉にするために思考を重ねていました。
田島 それほどネタが豊富なら、アイデアの掛け合わせもできそうですよね。
――ネタ帳という考え方はいいですね。例えば、所属する部門に新入社員が入ってきたときに、上司が部下に教えることって大体同じだったりしますよね。「そういえば前にも……」と、ぼんやりとした記憶だけが頭の中にあるのだけど、可視化されていないがために、毎年慌ただしい思いをするのは不毛かもしれません。
和田 そういうときこそ手帳の出番です。前の年の手帳を取り出して、4月のページを開けばすべて書いてあるんです。紙の手帳って、リマインドがとても楽なんです。それと、書いていると、どんどんオリジナリティが出てくるんです。教科書的なワンパターンの話だとつまらないでしょう?
――「3つの袋」でおなじみの結婚式のスピーチとか(笑)。
和田 そうそう。スピーチする時なども、リアルなネタがあったほうが聞き手に響くんですよね。
田島 聞きかじったことを、ただ言うわけではなく、ちゃんと自分の言葉にしているから伝わるということですね。
――昔の手帳とかを見返した時に、課題解決のヒントが得られることもありますか?
和田 もちろんたくさんあります。営業のマネジメントは人を育ててその人に結果を出させることに尽きるんです。だから、どうしたらその人のモチベーションが上がるか、どんな言葉で動き始めるか、長年書き溜めたものから探ることもあります。研究結果が、手帳に集積されているのだと思います。