貴方の会社に、「何だか扱いづらい……」「何を考えているのかわからない」と周囲から評価されている、30歳前後の社員はいないだろうか? 仕事ぶりは真面目、与えられたことはそつなくこなす。でも何となく覇気がなく、目にも力がない……。必死に頑張っている様子もうかがえない。そんな、どこかくすぶっている感じの社員を「新・ぶら下がり社員」と命名したビジネス書が話題となっている。
それが、『「新・ぶら下がり社員」症候群』(東洋経済新報社)だ。著者の吉田実氏は、人材育成プログラムを提供する企業の代表。新入社員からマネジャークラスまで、育成に携わった人数は実に6000名以上。年間100回以上はファシリテートを行なっている人物である。
そんな吉田氏によれば、「新・ぶら下がり社員」の特性は以下の通りとなる。
◆辞めない。けど頑張らない
◆仕事は70%主義で、プライベート優先
◆失敗やリスクを極端に恐れる
◆自分の仕事は重要ではないという意識が強い
◆自己評価が低い
◆昇進を望まず、転職も希望していない
――彼らがそうなってしまったのはなぜか? それは、この世代のビジネスマンを覆う「諦め感」に起因していると、吉田氏は喝破する。まず自分を諦め、そして組織や未来をも諦めてしまうのだ。
その理由は、どの企業でも20~30代が不足しており、50~60代は過剰に残っている現状にある。ポストも減っており、昇給もままならない。努力しても報われないと無気力になり、ぶら下がりになっていくのだ。つまり「新・ぶら下がり社員」は、この社会の閉塞感が生み出したものなのである。
かの論語には、「子曰く、吾十五にして学に志す。三十にして立つ。四十にして惑わず」とある。孔子は、30歳で自己を確立し、独立したという。このように30歳というのは、社会人としての自立を果たし、自分の価値を発揮して社会貢献する段階に当たる。それなのに、未来さえ信じることができなければ、待っているのは絶望だけだ。
そんな「新・ぶら下がり社員」たちを燃えさせるには、「彼らと真正面から向き合い、生きる目的や夢を掘り起こし、それを組織で発揮できる環境を与えることが重要である」と吉田氏は説く。そう、彼らに“ミッション”を喚起させることが、何よりの手立てとなるのだ。
さらには、彼らに組織への帰属意識が生まれれば、周囲に感謝するようになり、「自分は支えられている」という意識へと変わっていく。会社や社会に対してどのように貢献できるか……という利他意識が生まれる。要は「舞台を与えて、彼らに火を点けること」が有効な処方箋となる。
これまで、つかみどころのない彼らに手をこまねいていた先輩諸氏たちには、ぜひ彼らの未知数のポテンシャルを信じ、飛躍の場を与えていただきたいと思う。
(田島 薫)