1月27日に米系格付け会社S&P(スタンダード&プアーズ)が日本政府の長期債務の格付けをAAからAA(-)に1段階(ワン・ノッチ)格下げした。
外国の格付け会社が日本国債を格下げするかもしれないという観測は以前からあり、それ自体は債券、為替などの相場に大きな影響を与えるニュースにならなかった。
しかし、日本国債の格付けがAA(-)という状況はそれなりに厄介だ。S&Pは、トヨタ自動車やキヤノンのような国際企業の長期債務を日本国債がデフォルトを起こすような状況でも支払い能力に不安はないとして日本国債を上回るAAに据え置いた。しかし、地方債や電力会社の債券などの格付けは、国債格付けに連動して引き下げられた。
常識的には、日本の法律の下で円を主要な通貨として活動している企業や団体の場合、信用格付けは日本国債が上限だ。AA(-)が上限ということになると、今後、相対的な差の観点から、AA(-)を下回る格付けの地方債などが出てくる可能性があるが、この場合、「AA以上の債券に投資する」と決められた保守的な運用を行う資金(筆者の関係先にも存在する)では、こうした債券に投資しにくくなる。
日本における信用格付けは、国内資本の大手格付け会社2社が甘く、外国資本の3社が辛い傾向がある。運用のルールをつくる際には、複数の格付け会社の格付けの都合のいいものを使う規定にすることが多いので、S&Pの格付けが下がるだけでただちに運用に影響が出るとはいえないが、今後、各社の格付けが下がると、これが影響してくる可能性はある。
ただ、財政危機が喫緊の問題として取り沙汰されているスペインがAAで、国債の消化の4割程度を外国人投資家に頼る米国がAAAであることを考えると、S&Pの日本国債の格付けがAA(-)であることに対しては、少なからぬ違和感がある。