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世界トップ企業の大胆不敵なサプライチェーン

グローバルサプライチェーンが
直面するリスクとはなにか

――BCPを超える持続可能なサプライチェーンの構築

PwCコンサルティング
【第5回】 2017年1月11日
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 ここで、様々なインパクトを定量化するためのフレームワークであるTIMM(Total Impact Measurement Management)を紹介したい。

 これは企業が財務情報に偏らない経済、税金、環境、社会の側面で総合的なインパクトを定量的(金額)に評価することで、さまざまな選択肢の評価とトレードオフを比較検討することができるものである(図3)。

 コスト削減のためにサプライヤーを集約することを例に挙げてみよう。そのトレードオフとして、以下のようなものを考慮に入れる必要がある。

 「サプライチェーンの集約が自然災害時のリスクを高めていないか」「サプライチェーンルートの変化によって輸送手段に応じた温室効果ガスの排出量の影響がないか」「サプライチェーンの上流、すなわちサプライヤーのサプライヤーといったところで児童労働など社会へのマイナスインパクトをもたらすリスクを負っていないか」「廃棄物マネジメントの活用有無によって生態系が失われることによる環境リスクはないか」…。

 このようにサプライチェーン変革を伴う企業戦略において、財務収益だけでなく様々な側面で捉える事が必要だ。そうして浮かび上がったトレードオフを、単純なチェックや感覚的な判断に頼ることなく、金額換算された数値情報として管理することで、望ましい意思決定ができるだけでなく、判断基準の透明性や説明責任の明確化も図ることができる。

望ましい成長を実現する
サステナブルサプライチェーンの構築

 リスクネジメントというと、日本企業は他社が対応しているレベルを意識しながら実施するケースが見受けられる。それでは他社と差別化し、強みにすることはできない。企業の生き残るべき道を探るべく、不測の事態に直面した場合でも顧客サービスを落とさない姿勢、それを認識されブランド力に変えていくことが重要だ。

 例えば、サプライヤーや同業他社などと連携して災害時にも事業を断絶させない仕組みを強めている企業は、顧客視点でも信頼のおける企業だと評価される。また、従業員や地域社会とのつながりを重視している企業は社会への貢献が高い企業としてのイメージアップにつながる。このようにリスクと上手に付き合うことは経営上の強みになり攻めの経営ができるのである。

 今日の企業経営には、誰もが恩恵を享受し、消費者、従業員、サプライヤー、株主、社会が同じように利益を得る成長が求められている。社会が健全に繁栄し、安定すれば、企業の業績も向上し、健全なビジネス感覚が育まれ、望ましい成長といえる。

 しかし、これは必ずしも従来の財務報告や経営報告に示されるものではない。サプライチェーン全体における人権、社会、倫理、環境といった面でステークホルダーと調整し、企業の持続可能性(サステナブル)を追求し、それを効果的にアピールすることも必要になるだろう。信頼され、尊敬される企業になること、それこそが持続的な望ましい成長を続け勝ち残る企業となる。

 リスクマネジメントを活用、昇華させることでグローバルに活躍する日本企業、ブランドが増えることを願う。

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どのような業界にいようとも、戦略を遂行することは難しくなっている。IoT、AI等技術の進歩は私 たちの価値観を変え、顧客の価値観もまた著しく進化している。競争相手は全く新しい事業モデルを構築し、挑戦してくる。これまでの常識が変わっているのだ。これはリーダーシップを担うすべての人に共通する課題ではなかろうか。 本連載では企業が戦略を実行するために必要なオペレーションの最新モデルを取り上げ、グローバル市場で生き残る企業の条件を探る。

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