世界経済の成長に支えられ、企業業績が回復局面にある一方、長引くデフレや、景気の先行き不透明感から、企業も家計も日本経済の今後に成長期待を抱きがたい。この閉塞感の根源的要因は何か。どのように打破するのか。金融政策の役割は何か。白川方明・日本銀行総裁に聞いた。
(聞き手/「週刊ダイヤモンド」副編集長 遠藤典子)

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Theme 1 日本経済の構造問題
デフレと低成長率をどう克服するか

──日本の景気の現況と見通しは。

しらかわ・まさあき/1949年福岡県生まれ。東京大学経済学部卒業後、日本銀行入行。信用機構局信用機構課長、企画局企画課長、大分支店長、ニューヨーク駐在参事、国際局参事を経て、97年審議役、2002年理事、06年京都大学公共政策大学院教授。08年より現職。
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 わが国の景気は、リーマン・ブラザーズ破綻以降の急激かつ大幅な落ち込みを経た後、緩やかな回復の過程にある。もっとも、2010年秋口以降は情報関連財の在庫調整や、耐久消費財に関する政策効果の反動減に加え、夏場にかけての円高の影響もあり、景気改善の動きに一服感が見られる。

 一方、物価について見ると、生鮮食品を除いた消費者物価は、09年の夏に前年比マイナス2.4%と大幅に下落したものの、その後の下落幅は縮小を続けている。高校授業料の実質無償化などの影響を除いたベースで見ると、ごく最近では、物価水準は前年並みで推移している。

 今後は、海外経済の回復基調が続くなかで情報関連財の在庫調整が進捗し、国内での耐久消費財に関する反動減の影響も徐々に薄まっていくと見ている。したがって景気改善テンポの鈍化は一時的なものにとどまり、その後は、新興国や資源国に牽引されるかたちで世界経済の成長率が再び高まっていくことなどから、日本経済は、緩やかな回復経路に復していくと考えている。

 具体的には、世界経済の成長に支えられて輸出が増加し、企業収益が改善を続け、設備や雇用の過剰感も徐々に解消していくことによって、輸出、生産から所得あるいは支出への波及メカニズムが次第に強まっていくと想定している。

 物価もマクロ的な需給バランスの改善などから消費者物価前年比のマイナス幅は縮小し、その後、プラスの領域に入っていくと考えている。

 これらを総合すれば、日本経済は、なお時間はかかるものの、物価安定の下での持続的成長に向けて着実に歩みを進めていく、というのが日本銀行の標準見通しである。もっとも見通しの不確実性は大きく、わが国の景気に対し、新興国、資源国経済については上振れ、米欧経済についてはどちらかというと下振れ方向のリスクを意識している。