気前のいい父親が亡くなったら
葬式代の貯金もなかった!

年金暮らしの親と帰省時に話しておきたいお金のこと

 正月休みに帰省の予定を立てている人も多いことだろう。今回は「年金暮らしの親のお金」についてお話しする。親子とは言っても、親の「お金」については踏み込みにくいと考えるだろうが、親が困った事態になると子世帯であるみなさんにも降りかかってくることになりかねない。少しずつでも親子で情報共有を図ることは必要だ。

 最初に認識しておきたいのは、親の財政状態について「たぶん困っていない」「お金に余裕がありそう」などといった思い込みや希望的観測は禁物だということ。存命中に使い切れないほどの金融資産を持っている高齢者がいるのは確かだが、すべての親ではない。60代のときにあったはずの老後資金がどんどん目減りし、年金で自転車操業の暮らしをしている70代、80代は意外に少なくないのである。

 ここまで読んだところで「親がお金に困っているのだとしたら、できる限り知りたくないから、この先を読むのをやめておこう」と思う人もいるかもしれないが、最後まで読んだほうがいい。なぜなら親のお金のことは、知りたくなくてもいずれ知ることになり、問題が表面化すると取れる対策が限られる可能性が高いからだ。

 先日、知人のお父さんが70代後半で亡くなり、葬儀に参列した。後日、知人が「葬式代の貯金もなく、驚いた」と言う。お父さんは60歳まで比較的大きな会社に勤め、その後も子会社などで職があり、70歳まで働いた。つまり、60代のあいだは年金に加え給与収入もあり、完全リタイア後は60代に厚生年金に加入して働いていた分、70歳以降の年金は世間相場より多い額だった。

 月に1回、家族で実家に帰るとごちそうが用意され、外食代もすべて払ってくれるし、孫にはイベントごとに小遣いをくれる気前のいい親だったので、葬式代の蓄えもないことに知人とその弟はがく然としたようだ。お父さんは仕事をリタイアしてからしばらく経っているし、身内・友人も高齢なので葬儀の参列者はそう多くはなく、費用は200万円くらいだったと言う。

「それで、お葬式代は誰が出したの?」と尋ねてみると、「兄弟2人で出した。100万円ずつ」と苦笑い。まったく心づもりのない急な100万円の出費は、痛手だったに違いない。

 ほとんど貯蓄がなかったのは、賭け事をしていたわけでもなく、借金の返済に追われていたわけではない。ただ、膨らんだ支出のまま過ごしていたからと思われる。定年以降も仕事があったのはラッキーであったが、60代のときの収入が普通の年金生活者より多かった分、支出の見直しをせずに生活費が膨らんだままの状態で70代を迎えたのだろう。収入以上の支出を続け、結果として貯蓄が底をつく寸前に亡くなった。