人を救うための救急車や消防車が
一般車両の脅威になることも?

緊急車両との追突を防ぐアラート「Haas Alert」と、自身の事故経験をもとに開発したコーリー・ホース氏

 その体験を元に、救急車や消防車などの緊急車両の存在が、周囲のドライバーにすぐわかるようなアプリを開発した。このアプリは消防隊員や救急隊員が自らのスマホにダウンロードするものだ。彼らが一度ダウンロードすれば、その後一切アプリを開く必要はなく、彼らが運転する緊急車両の位置が自動的に発信される仕組みだ。

 そのデータを集積し、緊急車両のスピード、進行方向、現在位置をリアルタイムで把握できるシステムが、フォードで採用された。フォードが2018年までに生産する車に搭載される予定である。

 道を走る一般ドライバーたちは、スマホに同社のアプリをダウンロードする必要はなく、運転中にスマホをチェックする必要もない。

「例えば、消防車がどの程度のスピードで自分に近づいてきているのか、車のダッシュボード画面にアラートが流れ、音とテキストで表示されるようになっている。その結果、一般ドライバーは十分余裕を持って近づいて来る緊急車両を回避できる」とホース氏。

 警察車両などが一般市民にその位置を知られたくない場合は、警察官がアプリ上で「オフ」を選べば、位置表示を消すことが可能だ。ホース氏は前述した交通事故時の恐怖体験からアプリの開発に心血を注ぎ、命の尊さを切実に訴える。

「消防士や救急隊員の死因のトップは、実は現場へ急行する際の交通事故。全米では年に実に6万件もの緊急車両事故が起きている。その結果、例えばシカゴ市が負担する弁護士費用は年に1000万ドル(約11億8000万円)。LAならその倍。命と税金を無駄にしないためのツールとして役立ててほしい」

(上)新鋭企業だけでなく名だたる大企業も続々出展。ポルシェの新車発表では、マリア・シャラポワと俳優のパトリック・デンプシーが登場。(下)日産のブースでは映画スター・ウオーズがテーマに

 全ての自動車メーカーや、GPSメーカー、地図アプリメーカーなどとパートナーシップを組み、リアルタイムのデータを広く提供するのが同社の目標だ。

 現在はシカゴ、デトロイト、パロアルトなどの都市の消防士や救急隊がこのアプリで自らの車両の位置を発信中だ。消防車や救急車以外にも、スクールバス、レッカー車、道路工事の車両など、道路上で一瞬でも止まる可能性がある車両の運転手に対して、「同社のアプリをダウンロードしてほしい」とホース氏は語る。

「自動運転車が一般道路で実用化されると、緊急車両だけでなく、スクールバスのような独特の動きをする車両の詳細な走行データが必ず必要になる。今からそんなデータを先取りで蓄積しておき、自動運転車と緊急車両の事故を防ぎたい」という同氏の言葉から、彼の事故防止に対する熱い思いが伝わってくる。

 カーシェアリングと自動運転が当たり前となる時代に、必要とされるサービスを自ら考え作り出していくのは、一般にはあまり名を知られていないこうした新進気鋭のスタートアップ企業なのだ。