1.アラブショックの影響は
市場で長く続かない
カダフィ大佐に屈伏の文字はない。砂漠地帯に住むベドウィン(遊牧アラブ)の部族出身で、1969年にトリポリで同志の将校らとクーデターを成功させて以来、事実上のリビア国家元首として、アフリカ大陸で最も長く君臨し続けた。
かつては、中東諸国の中で反欧米の最右翼であり、“砂漠の狂犬”と呼ばれたこともある。先週23日の演説では、「最後の血の一滴まで戦う」と徹底抗戦の構えを強調した。
アラブ諸国の政情不安が、チュニジアやエジプトのような非産油国から大産油国であるリビアに広がったことで、世界経済や金融市場に与える影響は一気に拡大した。
すでにリビアでは、石油会社の操業やパイプラインによる原油輸送が中断され始めた。各国の反政府デモが民主化運動という様相を強めているために、バーレーンを通じて巨大産油国サウジアラビアに波及するリスクも意識されよう。
リビアの混乱は長期化が避けられまい。カダフィ政権に代わる統治の受け皿が見当たらないためだ。エジプトと異なり、国民は民衆の弾圧に加わった軍を信用していない。
そればかりか、部族対立や地域対立まで再燃し、イスラム勢力も巻き返しを狙っている。政治情勢が落ち着くまで、市場が材料視し続けるには長過ぎる時間を要する。すなわち、市場のテーマとしては早晩ピークを迎えよう。