英会話にはお金をかけるのに、
なぜ「日常会話力」は磨かない?

ビジネスになぜ雑談力が必要なのか齋藤 孝(さいとう・たかし)
1960年、静岡県生まれ。東京大学法学部卒業。同大学院教育学研究科博士課程を経て、明治大学文学部教授。専攻は教育学、身体論、コミュニケーション論。テレビ、ラジオ、講演等、多方面で活躍。
著書は『声に出して読みたい日本語』(草思社)、『読書力』『コミュニケーション力』(岩波新書)、『現代語訳 学問のすすめ』(ちくま新書)、『質問力』(ちくま文庫)、『語彙力こそが教養である 』(角川新書)、『雑談力が上がる話し方』『雑談力が上がる大事典』(ダイヤモンド社)など多数ある。
撮影/佐久間ナオヒト

 グローバル社会、国際化社会が叫ばれるこの時代、英語や中国語をはじめとするさまざまな外国語を身につけようと外国語会話スクールに通ったり、教材を購入して勉強したりする人が増えています。

 何万円ものお金や多くの時間をかけて異文化である外国語コミュニケーションを学ぶことに比べれば、ネイティブである日本語による何気ない日常会話、雑談という気軽なコミュニケーションの簡単なルールやテクニックを身につけることは、決して高いハードルではないはず。英会話を学ぶより、日々の雑談のコツを知ることのほうが簡単かつ有効なのです。

 最近では、新卒採用においても「雑談力」が重視される傾向にあります。書類や自己PRの場である面接だけでなく、インターンシップやOBOG訪問などでの何気ない会話のやりとりから、「あの学生はコミュニケーション能力が高い」などと判断され、高い評価を受けることも。
 商談や接客などでも雑談力は重要視されています。
 いまや巧みな営業トークがあればモノが売れるという時代ではありません。モノが売れない時代だからこそ、お客様と信頼関係を築くことが大事。そこで頼りになるのが雑談力です。

 雑談力とは、つまるところコミュニケーション能力。本当に雑談が上手な人は、ダラダラとおしゃべりはしません。ひと言、ふた言で場があたたまれば、「それではまた!」とサクッと会話を切り上げたり、商談であれば「本題に入ります」とスイッチを切り替えたりします。このメリハリこそが雑談力の肝。相手との適切な距離感を保てる人は、雑談力のある人なのです。