マツダは、フォードとの資本提携解消により米生産基地がなくなったため、トヨタとの業務提携を生かし、2014年からメキシコ生産を開始した。ホンダは、メキシコで二輪・四輪車生産を展開し、2014年からフィット生産第二工場を稼働させている。トヨタは、従来メキシコでの生産は、ピックアップトラック「タコマ」専用工場で約5万6000台の生産能力にとどまっていた。これにカローラ生産の新工場計画で2019年の生産稼働を目指し、昨年11月に起工式を行ったばかりだ。

 日本車だけでなく、メキシコはGM、フォード、フィアットクライスラーが生産基地として確立しており、VWもメキシコ生産で米国供給体制を固めている。このほか、アウディと起亜は2016年からメキシコ工場を稼働、BMWはトヨタと同様、2019年からの生産稼動を計画中だ。

 このように、メキシコは北米自動車生産基地として世界の自動車メーカーが集積している。その理由は、メキシコの労働コストが低く、採算が厳しい小型車生産に適していることと、NAFTAの活用に加え、メキシコ政府がFTA(自由貿易協定)に積極的に取り組んできたことで、輸出基地としてのメリットが大きいことが挙げられる。

 NAFTAに関わるもう一方のカナダでの日本車生産は、現在トヨタとホンダだけとなっている。かつてはスズキがGMとの合弁CAMIで1989年から生産していたが、2009年のGMとの資本提携解消後に撤退し、北米事業から完全撤退している。

 日本車各社は日米貿易摩擦で日本車対米輸出自主規制が始まった1981年頃から、米国生産進出を積極展開するようになった。ホンダの1982年からの米オハイオ工場稼働を皮切りに日産、トヨタ、三菱自、マツダ、富士重工・いすゞにスズキ(カナダ)と生産進出し、以来30年余が経過する中でスズキの他いすゞが退き、三菱自はクライスラーとの合弁解消後、採算が悪化し生産撤退した。

 今回、トランプ氏から名指しでメキシコ新工場を批判されたトヨタは、当初米国生産進出には慎重だった。トヨタの米国生産進出は、当時ライバルだった米GMとの合弁生産(NUMMI;1984年設立)だった。トヨタはGMを「先生」として1984年からNUMMIで生産を開始した。これに次いで1986年より米ケンタッキー工場での単独進出に繋げたのである。現在ではインディアナ、テキサス、ミシシッピと米国4工場で生産している。

 豊田章男社長の言う「米国で30年以上にわたり、2500万台以上のクルマを生産・供給、雇用にも貢献し、米国の市民権を得てきた」ことになる。くしくも豊田章男社長は、NUMMI副社長として米駐在の経験を持つ。また、張富士夫名誉会長は、米ケンタッキー工場の稼働、現地化に腐心したことを、かつて筆者に語ってくれたことがある。