正月は日本の文化を再確認できる時期。普段、日本文化を意識しない人でも、年越し蕎麦、おせち料理、お雑煮など口にできたのではないだろうか。

 日本の食文化は例えばおせち料理のように行事と深く結びついている。自然の恵みをわけあい、同じものを食べることで、家族や地域の絆を深めてきたのだ。ところで、お正月に食べる魚=正月魚は関西ではブリ、関東では鮭が一般的だ。しかし、静岡県伊豆地区ではカツオの塩漬け=潮カツオを食べる風習が残っているという。この潮カツオ、鰹節の原形というではないか。

 昨年の12月、西伊豆田子町にある創業1882年のカネサ鰹節商店を訪れ、5代目店主芹沢安久さんからお話を伺った。

かつて日本中にあった魚の塩蔵品が
伊豆・田子地区だけに残った理由

カネサ鰹節商店の5代目・芹沢安久さん

 訪れた時は潮カツオの製造の真っ盛りで、芹沢さんも取材対応と潮カツオに藁を締める作業に追われていた。

「潮カツオは生のカツオを塩漬けにした塩蔵品です。歴史は古く1500年くらい前の飛鳥時代といわれています。その後、荒堅魚は奈良時代には税金として納められるようになりました。これが潮カツオに近いものだ、と考えています。かつては獲れすぎた魚を保存するための塩蔵品は日本各地にありましたが、今ではこの田子地区だけに残ったということです」

──どうして田子地区だけに残ったのでしょうか?