高校卒業の威力は大きい
中退したら最終学歴は「中卒」に

 数多くの「当たり前」が当たり前でない状況の中で育ってきたユースが必要としている支援の幅は、極めて広い。その中で、坪井さんが重要と考えているものの1つは、「高校を卒業する」ことに関する支援だ。

 高校を中退すると、高認に合格しても最終学歴は中卒のままだ。たとえ難関大学に入学しても、卒業するまでは中卒。もしも大学を中退したら、最終学歴は中卒のままになる。それでは就労・資格取得など、数多くの機会が大きく制約されてしまう。

「今、高校は進学したければ100%進学できます。でも、『卒業する』という気持ちを持ち続けられるように支えて、卒業まで見届けなくては」(坪井さん)

 “卒業“に強いモチベーションを持っていない高校生は、全日制高校に通学していても、ちょっとしたきっかけで簡単に中退しがちだ。もちろん、学費・諸経費の安い県立高校通信制課程という選択肢もあるのだが、自分の意志と努力だけで、この高校を卒業するのは容易なことではない。もしも親が、高校を卒業することの大きな意義を知っていれば、余裕のない暮らしの中で無理をしても、いわゆる「通信制サポート校」に子どもを通わせる場合がある。高校卒業までの学費は200万円前後だ。どの親にも可能な選択ではない。

「福岡市に、ストプロを信頼して、気がかりな生徒さんをつないでくださる公立高校があります。その高校の、私の知っている先生のお1人は、高校を中退しそうな生徒さんたちに求人誌を見せて、中卒で就ける職業がいかに少ないか、高校を卒業すると選択肢がどれだけ広がるか、現実を理解させているんです」(坪井さん)

 高校というところは、卒業すれば「高卒」という学歴が得られるだけの場所ではない。義務教育の小学校や中学校には及ばないが、ある程度、本人を包括的に支える枠組みもある。

「高校生でも、学校というハコは大切です。学校に在学しているということは、本人が必要な情報や機会を、必要なときに、黙っていても提供してくれる場所にいるということなんです。それはすごいことなんだと、中退して初めて気づきます。1人のユースを、民間の1個人の好意やストプロのような団体だけで支えるのは、無理です。でも高校に在学していれば、高校では“届かない”ところを民間で支えることは、無理というわけではなくなります」(坪井さん)

 坪井さんのかたわらで、ストプロの理事を務める藤田裕子さん(弁護士/新星法律事務所)さんも語る。

「あと5ヵ月で高校を卒業できるという段階で、家庭にいられる状況ではなくなり、他県から逃げてきて福岡で保護された高校生がいました。でも、高校のある地域の自治体は、受け入れに消極的だったんです」