今こそ復興プランを打ち出せ!

 「日本株が下がっている今が買いのチャンスだ」「バフェットも日本株を売らないぞ」との声が変わってきた。「日本株が買いだ」と言ってきた連中には暗黙の合意があった。「あの経済大国日本だ。必ず素晴らしい復興プランを誰かが描いているはずだ」というものだ。

 こちらアメリカをはじめ、海外の多くの人々が被災した苦しい立場でも列を乱さず給水車から納税にまで我慢強く並ぶ日本人を称賛した。

 さて、次はリーダーの番である。「あの素晴らしい国民に選ばれたリーダーに復興策がないわけがない」と示す番なのだ。

 阪神淡路大震災との比較が言われるが、私はこの東日本巨大地震の方が数倍も困難な復興になるではないかと思う。一つは被害の甚大さ。地震のエネルギーも数百倍で、今回は津波により町ごと流された自治体もある。原発による汚染や風評被害も拡大するものの収束の気配はまだ見えない。

 次に16年前と比べ財政の逼迫具合が違う。阪神淡路大震災があった1995年の公的債務残高は国と地方あわせて約550兆円と今の約半分の水準だった。それでいて名目GDPは500兆円と現在とほぼ同じだ。デフレはその後16年続いている。95年の株価はなんと今の倍以上の19000円台を維持していた。

 そして、原発と火力発電所が被災し、首都圏への供給用電力が30%以上不足している。日本のGDPの40%を稼ぐ首都圏の血液を絶ってしまっているのだ。これにより、生産はじめ各種企業活動が打撃を受け、自粛ムードたっぷりの薄暗い街並みが人々の消費意欲を削いでいく。

 各金融機関やシンクタンクが今回の震災の被害総額を計算し始めた。5兆円から20兆円まで幅広く試算している。この損害を、増税や国債発行による補正予算や通常予算の組み替えで、財政支出して穴埋めしていくというのが通常の復興策だ。しかし、こんな通常の手法では、新たなデフレスパイラルに入りつつある日本経済で、お金は回らないと思う。効果のない施策のために財政を傾かせ、増税で経済までさらにおかしくしてしまいかねない。

 「景気」の「気」は「気分」の「気」である。人々に明るい未来を感じさせることが必要だ。加えて、現実的に明るい未来が見えれば、商品市場で投機として回されている世界にだぶついているお金が日本にやってくる。世界にだぶつく民間資金をうまく導入できれば財政出動なしで、復興政策ができると思う。