3月11日に発生した東日本大震災。多数の死傷者が出て、壊滅的な打撃を受けた被災地・石巻の赤十字病院へ、日本医師会が派遣する災害医療チーム「JMAT」(ジェイマット)の一員として派遣された30代医師の現場レポートを、可能な限りリアルタイムに更新していく。最終回の今回は、これまでの活動を総括して、被災地で医療支援を考えている医療従事者に向けたメッセージをおくる。

被災地で実際に活動して
わかったこと

 我々、ヘルスケアクリニック厚木の3人のチームは、日本医師会が派遣する災害医療チーム「JMAT」の一員として、神奈川県医師会から宮城県石巻市に派遣された。

 3月23日(水)の夜に神奈川県を出発し、石巻市内で3日間の医療支援を行った。ほんのわずかな期間ではあったが、被災地で実際に活動してわかったことは多い。

 緊急連載・最終回の本稿では、被災地で医療支援を考えている医療従事者に向けて、メッセージをまとめたい。

急性期から
慢性期に変わる被災地

 被災前、石巻赤十字病院は、2次救急・3次救急の拠点病院として機能していた。

 わかりやすく言えば、体の具合が悪いと感じた人はまず地域にある“町のお医者さん”に行き、そこでの治療が難しい場合に石巻赤十字病院が治療していたわけだ。

 つまり同病院は本来、脳神経外科や心臓血管外科、放射線治療科などの専門科を抱えて、より高度な治療技術が求められる疾患に対応していた。

 だが被災後は、包括的にすべての治療を受け入れざるを得ないため、本来の専門領域である「高次医療」を十分に提供できていない。