日本企業が中国進出で
直面する「2つの障壁」
最近、成長の見えない日本市場に見切りをつけ、潜在力のある中国市場を本気で攻めようと考える経営者が、日本でも増えているようだ。
実際上海にいると、最近特に小売業、サービス業の中国進出の話を耳にする。日本市場では期待できない高い成長性を、中国をはじめとする海外市場に求めるという戦略は、多くの日本企業にとって極自然な選択肢だろう。
ただし、「アウェイ」である中国市場でのビジネスは、想像以上に難しい。中国市場に挑む日本企業が、最初に乗り越えなければならないのは、「アウェイで売る」という壁だ。
日本ではある程度名の通ったブランドや商品でも、中国では全くの無名なので、ゼロからのスタートとなる。「もう一度創業をやり直す」くらいの気持ちで取り組まないと、中国人や中国企業に商品・サービスを売ることなどできないのだ。
そして、苦労してこの壁を乗り越えたとしても、目の前に立ちふさがるもう1つの高い壁にぶち当たる。中国で売ること以上に大変な「代金回収」という壁だ。
今回は、この「代金回収」の壁が日系企業にとって想像以上の「厚い壁」になりかねないリスクについて、指摘する。
大前提として、中国では日本と同じように「月末締めの翌月末払い」の感覚で商売をしてしまうと、まず代金回収はできない。おカネをもらわないうちに商品を先に渡した時点で、中国では「負け」となるからだ。
「中国のAmazonで書籍を購入する中国人の9割が、クレジットカードによる先払いではなく、(商品を確認した後におカネを払える)代引きを選ぶ」という事実が示すように、「相手より先に人質を渡さない」というのが中国における常識なのだ。
「キャッシュ・オン・デリバリーで商売すれば問題がないのでは?」と考える人もいるかもしれないが、そう単純な話ではない。ビジネスには力関係が影響するからだ。