被災地で生じうる栄養の問題

(1)初期(~1週間、食料・飲料欠乏)…カロリー、ビタミン、ミネラル不足、脱水(成人はこれまでの貯蓄で何とか乗り越えられるが、疾病者や高齢者、乳幼児・小児など許容量の低い方は、危険)

(2)中期(1週間~、食材偏在)…ビタミン欠乏症の危険、代謝の低下に伴う慢性疲労、うつなど心身の停滞、脱水・貧血など循環器系の停滞に伴う血栓症、免疫力の低下に伴う感染症の出現増加

(3)長期(数週間~、食料回復)…長期代謝の停滞に伴う生命代謝の低下、疾病の悪化(高齢者や乳幼児・小児の疾病者に注意)

 ビタミンやミネラルの欠乏は、全ての生命代謝に関与し、その停滞の継続は循環器系、免疫系、内分泌系、神経系、脳循環、脳機能など全身のネットワーク系の停滞につながります。それに伴い、うつ傾向、感染症、血栓症、心臓や腎臓などのさまざまな臓器の機能低下を招く可能性があります。

 ビタミン欠乏症の初期は潜在的なもので、すぐには気づかれないことが多いのが特徴です。しかし、欠乏症が生じると命に関わることになりかねません(例えば、B1欠乏症→脚気→心不全→死)。

 まず、カロリー、ビタミン、ミネラルの補給の意義について解説していきます。その上で具体的摂取法を指南したいと思います。

(I)心と体の必須栄養素の解説

 栄養素にはさまざまなものがありますが、体内で合成できるものとできないものがあります。そのうち体内で合成できず、必ず口から経口摂取するしかない栄養素を必須栄養素といいます。ですからどんなことがあっても生きるためにはまずこの必須栄養素の確保が最低限必要です。それぞれの必須栄養素は体内での吸収、運搬、機能、代謝、貯蔵、排泄などが異なり相互関係もあるため個々の特徴を理解して摂取する必要があります。

【それぞれの栄養の意義と摂取食材について(脳と身体両方の維持のために)】

①糖質
…脳と身体活動の栄養源(冷静にものを考え、それに従い行動するために必要)
→食品では、ごはん、パン、麺類、芋類、果物類、砂糖、ブドウ糖
→補助食品では、スポーツ用のフードバー、ジェルや飲料

<アドバイス>
心と体で糖がエネルギーとして働くには、脳と身体の両方にビタミンB群が必要。腸から吸収され血液に乗った栄養素は身体全体に分配されるが脳に入るためにはBBB(血液脳関門)という膜(関所)を通過しなければならないが、この膜は脂溶性のため基本的に水溶性の栄養素は通さない。脳内の糖の代謝に必要なビタミンB群は水溶性でありなかなか脳に入りづらい栄養素といえる(詳細は後述)。糖に関しては脂質やアミノ酸から解糖系を介しエネルギー産生可能であり比較的体内に蓄えは存在するが、脳には貯蔵庫がないため常に一定の血糖を脳に送り届け続けなければならない。心の健康を考えると脳は100%有酸素運動(体は30%以下)であるため活性酸素が生じやすく、不飽和脂肪酸が多い脳は酸化されやすいという問題点がある。BBBは脂溶性なため脂溶性の抗酸化物質の補給が脳には重要となる。