高層階になればなるほど、実際の価格と固定資産税評価額との乖離が大きくなる。だから手持ちの現金をタワーマンションの高層階に変えれば、相対的に相続税と固定資産税を小さくでき、節税効果が大きくなる状況が生まれる。しかも人気のタワーマンションなら、流動性も高いから、売って現金へ戻すことも比較的容易だ。こうした仕組みを利用すれば、誰でも簡単に大きな節税ができてしまう。

現金を不動産へ変えることで
相続税を軽減するやり口に「待った」

 しかし、近年、このようなタワーマンションを利用した節税対策が頻発したため、足もとでは規制が厳しくなっていることを忘れてはならない。たとえば、極端なケースに対して「待った」をかけたのが、国税不服審判所裁決(11年7月1日)である。

 このケースでは、高齢のA氏が亡くなる1ヵ月前に、2億9300万円でタワーマンションを購入。その後、A氏が亡くなった10ヵ月後に相続人B氏がその物件を2億8500万円で売却した。つまり、手持ちの現金を亡くなる直前に不動産に変え、すぐにまた現金に戻したわけだ。

 相続税は、相続財産の大きさに税率をかけて計算される。資産家のA氏からB氏へと約3億円もの現金が相続されれば、その額が税率計算の基準になり、支払う税金は巨額に上る。しかし、不動産の財産評価は現金や有価証券を下回るので、A氏が生きている間にタワーマンションへと「資産換え」をしておけば、建物部分が大きいため、税率はその物件の固定資産税評価額がベースとなり、支払う税金は現金の場合と比べてかなり安くなる。

 このように、A氏の死亡前に現金を不動産に変え、死亡後に不動産を売却して現金に戻すことにより、事実上、通常の場合にかかる相続税の支払いを最小限に抑えながら現金を相続することができるのだ。また前述の通り、物件が高層階であればあるほど節税効果は大きいため、B氏が不動産を保有していた10ヵ月間においても固定資産税を安く抑えることができた。

 結果的にこのケースでは、「本来のタワーマンションの購入価額である2億9300万円で相続税の申告をするように」という審判が下され、国税からの指摘に沿ったものとなっている。

 さらに国税庁は、2015年10月29日に記者発表を行い、「実際の売買価格と著しく不適当に評価額が乖離してしまうような過度な節税対策は認めない」との見解を示した。17年1月現在、18年以降に引き渡される新築物件において、高層マンションの高層階と低層階では、固定資産税評価額を高層階のほうがより高くなる税制改正を行うことを政府・与党で検討している。