(4)施設の雰囲気

 老人ホームは、価値観や性格の異なる人たちとの集団生活の場となります。しかも、それが多くの場合、亡くなるまで続くことになります。したがって、その「場の雰囲気」がどのようなものであるか、入居する人(あなたの親)にとって、相応しいものであるかどうかの見極めが重要となります。この見極めを見学会のような短時間で行なうのは、現実にはなかなか難しいので、できれば入居を検討している人ご自身で体験入居を数日間(できれば、最低4日程度)行なって体感するのが一番です。

 とはいえ、4日間の体験入居を多くのホームで行なうのも現実には大変なので、やはり見学したときに、だいたいの雰囲気を把握することが必要でしょう。そのためには、現場のスタッフや、すでに入居している人、できれば入居者の家族との会話の機会を多く持つことが最も役に立ちます。

 たとえば、見学に行った時に、スタッフの表情、声色、動作全体に注意してみてください。「ようこそいらっしゃいました」と感謝の気持ちを込めて行なっているのか、「こっちは忙しくてそれどころじゃないんだよ」と心の中で思いながら形式的・義務的に行なっているのかはわかるもので、同じ挨拶の言葉からでも、その施設のマネジメントの状態が透けて見えます。

 短時間の見学で施設サービスの質を把握するには、内装や設備などのハードに目を向けるよりも、スタッフとの会話の機会を多く持つことの方がはるかに役に立ちます。

(5)入居者と家族の評価

 老人ホームという商品は、基本的に「口コミ商品」です。したがって、その老人ホームの評判を知りたければ、すでに入居している方やその家族、あるいはそのホームのある場所の周辺に住んでいる人から話を聞くのがとても有益です。また、そのホームの出入りの業者の人に訊ねてみるのも、一つの方法です。

 老人ホームは、建物や設備などの「ハード」に、食事や入浴サービス、介護サービス、アクティビティなどの「ソフト」が乗っかったものです。そして、この「ハード」と「ソフト」の価値は、ホームのスタッフと入居者との「集合的な交流・活動」によって初めて生み出されるものです。

 したがって、まだ入居者のいない、あるいは入居者が少ないホームの内覧会や見学会に出かけても、その価値は決してわかりません。入居を前提とした見学の場合は、ある程度入居率の高いところに行かないと意味がないと認識してください。

 


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