親が70歳を過ぎたら元気なうちにやるべきことは、親が将来、要介護や寝たきりになったときにどこに住むか、そのための情報収集を始めることです。こういう話を40代、50代の人にすると、「ウチの親はまだ元気だから、そのときになったら考えればいいですよね」、「そんなことは、親が勝手に決めればいいことでしょう」などといった反応が返ってきます。
ところが現実には、それでは済まないのです。なぜなら、元気だと思っていた親が突然、病気や事故で入院し、要介護や寝たきり状態になると、あなたの生活が激変する可能性が大きいからです。
たとえば、もし、あなたが東京で仕事を持ち、家族と東京近郊で暮らしていたとします。故郷の山形で一人暮らしをしているあなたの母親が脳卒中で突然倒れ、要介護状態になったら、どうなるでしょうか。親が倒れたそのときには、会社はとりあえず数日の有給休暇を取らせてくれるでしょう。
しかし、それ以降も要介護状態が続いたとして、勤務先で重要な役割を担っているあなたは、毎週、有給休暇を取れるでしょうか? 毎週末に、あなたが山形まで通うことが業務の障害になりませんか? あなたが通えない場合は、奥さんに代わりに通ってもらえるでしょうか? 夫婦どちらが通うにしても時間的・経済的に、そして精神的にも大きな負担となります。
寝たきりになったら、
半数の人が3年以上寝たきり
これが短期間なら、まだ何とか対応できますが、実際にはあなたが思っている以上に長期間にわたることが多いのです。日本では、寝たきり状態になってから亡くなるまでの期間が3年以上に及ぶ人が50パーセント、10年以上の人も15パーセント程度いると言われています。前述のとおり要介護認定者の数は、2010年7月現在で494万人、そのうちの84パーセントが75歳以上です。70歳以上で区切れば、この割合はもっと大きくなります。
親からのよくない知らせは、ある日、突然やってきます。そして、いったん要介護状態になると、長期戦になります。突然の想定外の知らせにうろたえなくて済むように、親が元気なうちに備えておくことが必要なのです。