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オフロードを走るというのは、少なくとも英国ではぜいたくなことだった。というのは走る場所を持っていることを意味したからだ。
1970年に革内装のレンジローバーが発表されたとき、ロンドンでは最もシックなクルマといわれた。それは(スコットランドとかに)領地を持っていることを意味したからだ。
オフロード性能とぜいたくさ。この2つはともにレンジローバーの重要なテーマだった。最新モデルでもそれは同じだ。
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レンジローバー・イヴォーク・コンバーチブルが2016年に発表されたときも、スタイリッシュなフルオープンのボディに、オンロードでもオフロードでも快適に走れる高性能の組み合わせを継承していた。
冬になると折に触れてジャガー・ランドローバー(いまは一つの会社)が試乗会を開くのも、雪上も得意科目であることを証明したいからだ。
2017年2月に斑尾高原でレンジローバー・イヴォーク・コンバーチブルに乗ったときも、最初は“こんな雪のなかで似つかわしくない”と思ったが、けっしてそんなことはなかった。
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イヴォーク・コンバーチブルは2リッターのガソリンエンジンにフルタイム4WDシステムの組み合わせ。時速30マイルまでなら約18秒で走行中にフルオープンに出来るソフトトップを備える。
斑尾高原から妙高高原は例年にない大雪で、峠道も真っ白だった。しかしウィンタータイヤを装着したモデルは、なんの不安もなく、快適さはオンロードと変わりなくドライブを楽しませてくれた。
テレインレスポンスというスイッチで、オンロード、荒れ地、砂など路面状況に最適な出力制御が行われる。それでスノーモードを選べばうっかりアクセルペダルを踏みすぎて車両が制御不能に陥ることもない。
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場所によっては雲が切れて太陽が照るところがある。走行中にぱっと幌を下ろす。その気持ちよさは格別だ。ぜいたくなクルマである。
イヴォーク・コンバーチブル(765万円)に加え、このときは試乗車も豪華布陣。レンジローバー(1339万円)、レンジローバースポーツ(1135万円)、ディスカバリースポーツ(700万円)、それにジャガーのSUV、Fペイス(849万円)。
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ジャガーFペイスも意外ともいえるほど雪道で気持ちよいクルマだった。通常はほぼ後輪駆動で必要なときに前輪にもトルクが分配されるトルクオンデマンドという4輪駆動システム採用。
きついコーナーでアクセルペダルを多めに踏むとリアが外にふくらむ後輪駆動車の挙動が出る。しかし一瞬後に「インテリジェント・ドライブライン・ダイナミクス」なるシステムが働きぴたっと元に戻る。一般道ではかなり安心できるシステムだ。
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どのクルマも美しく豪華な内外装を特徴とする。日本でも高級車として存在感が強い。いっぽうで繰り返しになるけれどコンバーチブルモデルを含めて悪路の走破性が高い。希有な高級車である。
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