インドでIT産業が発達した理由(3)教育

 インド人の約80%が信仰するのがヒンドゥー教です。ヒンドゥー教にはカースト制度という身分秩序があり、バラモン・クシャトリア・ヴァイシャ・シュードラという4つの「ヴァルナ」と、世襲的職業身分集団である「ジャーティ」によって社会が細分化されています。

 その数は2000とも3000ともいわれています。「世襲」という言葉からもわかるように、カースト制度の下では就きたい職業に就きたくても叶わないことがあります。

 インドの憲法は差別を禁じていますが、根強くカースト制度の影響が残っています。しかし、近年の産業の発展にともなって、「IT産業」という、カースト制度には規定のない職業が登場しました。これによって、低いカーストのインド人にも、少しの運と才能、たゆまぬ努力によって貧困から抜け出せるチャンスが訪れたのです。

 そのためインドでは、「貧困からの脱却」を胸に誓い、IT技術を習得するべく上位大学への入学を希望する若者が増えました。

超難関!インド工科大学の入学試験

 インド工科大学(IIT)とは、インドに16ある国立大学の総称です。2012年のデータによると、定員9590人に対して、受験者数は約50万6000人。実に約53倍の倍率で、98%もの受験生が涙をのむ入学試験です。

同大学を卒業したインド人の多くが、破格の給料を提示され、海外のIT企業で働いています。アメリカ合衆国のGoogleでは1400万円もの年収を用意するといいます。インド国内のIT技術者の平均年収が100万円程度であることを考えれば、破格の額。夢を求めて海外に活躍の場を求めるわけです。

 冒頭で触れた在留インド人の増加もまた、こうした背景があるのです。