ANAホールディングスが、日本航空(JAL)を猛追している。
2016年度第1~第3四半期(16年4~12月期)の営業利益は、JALの1373億円に対し、ANAは1302億円と、僅差にまで迫っているのだ。
JALが経営破綻し、公的支援によって劇的に業績を回復させたのは11年度からのこと。当時、営業利益はJALが2049億円、ANAは970億円と2倍以上もの開きがあったのだが、この5年の間にじりじりと詰めているのだ(図(1))。
これまでANAの収益力がいまひとつであった要因は、閑散期にあった。
日本における航空事業は、学校や多くの日本企業が夏休みに入る7~9月、次いで帰省ラッシュの時期である年末年始に収入が集中する傾向にある。
故に13年度までのANAは営業利益ベースで、第1四半期(4~6月)と第4四半期(1~3月)は赤字。それを第2四半期(7~9月)と第3四半期(10~12月)の収益で補っていた(図(3))。
JALも以前は同様の収益構造だったが、経営破綻に伴う構造改革により収益を平準化させ、年間を通じて黒字を出せるようになっていた。
しかし、ANAは大ナタを振るうわけにもいかず、シーズナリティ(季節変動に伴う市場や価格の変動)に左右される構造を引きずっていた。それが、14年度から閑散期における収益をかさ上げすることができ、全四半期で黒字を出せるようになってきたのだ。
その結果、営業利益はJALと比肩するまでになり、企業の真の実力を示すとされるEBITDA(営業利益+減価償却費)で見れば、16年度はJALが2670億円の見通しであるのに対し、ANAは2870億円の見通しと逆転しそうな勢いだ(図2)。
それでは、ANAはどうやって、閑散期の赤字を解消していったのか。それには、三つのポイントが挙げられる。