ビッグデータ活用、選択と集中を
顧客との濃密な関係性を生かせ

 今後、日本では少子高齢化が一段と進む。それを考えると、小売業界では縮小するパイの奪い合いがさらに激化するだろう。そういう中で百貨店がショッピングモールなどを展開する総合スーパーと競争すれば、いたずらに体力を消耗しかねない。実際、大手百貨店の売上は東京、大阪、名古屋などの大都市に集中している。そして、都市の一等地にはユニクロやザラ、H&Mなど国内外の衣料量販店も進出している。

 百貨店にあって他の小売業にないものは、むしろ顧客との濃密な関係性かもしれない。近年のマーケティング理論では、売る側と買う側の“関係性マーケティング”の重要性が増しているといわれている。それは企業が顧客と長期の信頼関係を築き、それを基にして利益を獲得する考え方だ。

 総合スーパーなどは独自のクレジットカードや電子マネーを発行し、傘下に銀行も抱えている。カードなどの契約を結んだ顧客には、ポイント獲得を通してその企業の店舗で買い物をするインセンティブが生まれる。

 百貨店の関係性マーケティングは一段と顧客との双方向の関係が強い。。特に外商ビジネスには大口顧客からの信頼が欠かせない。関係性マーケティングを軸に、顧客との長期的な信頼関係を強くしていくことが、百貨店ビジネス再生につながる可能性はある。

 それは海外での事業開拓にも有効だろう。日本のホスピタリティの高さは国際的にも認知度が高い。きめ細かなサービスを徹底し富裕層顧客の潜在的な需要を発掘できれば、事業再生と成長は可能だ。

「百貨店で買いたいモノがない」との指摘がある。今、世の中ではモノがあふれ、消費者は本当に欲しいモノがわからないとの声もある。百貨店が生き残るためには、集客力を高めるだけでなく、大口顧客をターゲットにし、ほしいモノを届ける発想も必要だ。

 そのためはターゲットの消費者層を絞るなど、選択と集中が欠かせない。そこに、ビッグデータなどの新しい技術を用いることで、これまでには気づかれていなかった消費行動を見出すこともできるだろう。百貨店業界が活力を取り戻すためには、まず原点に立ち返り、その存在意義を確認することから始める必要がありそうだ。

(信州大学教授 真壁昭夫)