商品を運ぶ段ボールを変えたら売り上げが伸びた──。食品・日用品メーカーが驚くビジネスモデルを展開するのが段ボール製造最大手のレンゴーだ。袋やフィルムなどパッケージを総合的に手がけ、売上高は4780億円。“儲からない商売”の代名詞だった段ボール業界を変革した大坪清社長のリーダーシップは、次世代にどのように引き継がれるのか。
(「週刊ダイヤモンド」編集部 柳澤里佳)

積み上げると連続したイラストが完成する珍しいデザインで買い物客の目を引く

 活気溢れる週末のスーパーマーケット。高く積み上げられた「今日のオススメ品」に買い物客の手が次々と伸びる。「この段ボール、おもしろいね」。風変わりなイラストに人びとの目がとまる。「マルコメ味噌」の文字とともにキャラクターが印刷されているのだ。

 別の場所では段ボールに印刷されたレシピを、携帯電話で写真に撮る主婦の姿も──。こんな光景を生み出しているのが段ボール製造最大手のレンゴーだ。

 小売り現場では効率化のため人手を減らし、商品を段ボールごと陳列することも珍しくない。しかしそうすると店内は地味で殺風景になってしまうし、肝心の商品がどんなものかわかりにくい。

 そこでレンゴーは、段ボールそのものに目立つような印刷をし、店内にそのまま並べられるような工夫を施している。

 ある大手カップ麺メーカーに対しては、おなじみの企業キャラクターを大きく印刷したところ、商品の中身はまったく変えていないのに、売り上げが数パーセント上がったという。

 消費者の8割は、実際に売り場で商品を見てから、購入する物を決めるという。「段ボールの基本機能は商品を守り、運ぶこと。だが今はそれらに加え“商品を売る”ための情報発信機能が求められている」と大坪清社長は説く。

「全種類揃えた!」。歴史ファンのあいだで流行した、歴史上の人物をデザインした缶コーヒー。デザインを手がけたのは飲料メーカーではなくレンゴーだ。商材に缶は持っていないにもかかわらずだ。