ミネラルウオーター、ヨーグルト、乾電池──。震災の影響で生活必需品がスーパー店頭から一瞬にして姿を消した。しかし、その後数日で商品が並び始める小売り店がある一方で、1ヵ月以上たった今なお、棚が埋まらない店がある。この有事で明らかになった商品調達力の差はどこにあるのか。

4月23日、イオン浦和美園店(埼玉県)の飲料売り場。韓国から調達したミネラルウォーターは、500ミリリットル入りが1本78円で販売されている

「震災前の3~5倍の発注をかけているが、納品されるのは1倍程度。日によっては入ってこない」(首都圏の中堅スーパー幹部)

 福島第1原子力発電所事故による放射性物質漏れで、大勢の人が安全な水を求めたため、3月下旬、関東圏のほとんどのスーパーの棚からミネラルウオーターがなくなった。

 しかし、スーパー大手2社は若干事情が異なった。関東圏では、イオンは震災前の10倍、セブン&アイ・ホールディングス傘下のイトーヨーカ堂は5倍の量が確保できていたのだ。

 水だけではない。加工食品は、工場の被災や計画停電で供給が絞られているうえに買いだめ需要が発生し、需給が逼迫する状態が続いた。だが、次ページ下表に見られるように、イオンとヨーカ堂は、需給バランスが崩れた商品について震災前の100%を上回る供給を続けた。

 このように今回の震災では、小売り各社の商品調達力の差が明確に出た。

イオンが有事に見せた
メーカーとの直接取引力

 イオンでは、「サプライチェーンをコントロールする力が奏功した」(岡田元也社長)というように、平時からのメーカーとの直接取引が商品調達力の源泉となった。

 日本の流通業界では、メーカーから小売りへの商品の流れのあいだに卸が介在しているのが一般的で、商品が店舗に届くまでは卸が在庫リスクを負っている。

 だが、イオンは中間コストなどを省くため、大手食品メーカー84社と直接取引をしている。メーカーからイオンの配送センターに商品が届いた時点で、イオンが買い取るかたちだ。直接取引していることで、メーカーの生産能力、イオンの販売力をお互い把握していることが交渉を進めるのに有利に働き、イオンは需要急増に合わせて平時の6倍の量を調達できた。