喫煙のリスクは肺ガンばかりではありません。中でも血管・循環器系に深刻な影響を及ぼすことは、よく知られているところでしょう。
タバコに含まれているニコチンは交感神経を刺激して心拍数の上昇や末梢血管の収縮を招きます。こうしたプレッシャーが長年にわたって繰り返されることによって、脳梗塞や心筋梗塞などの引き金となる動脈硬化が進行するのです。
動脈硬化は血圧が重要な目安になります。そのため「血圧は正常だから大丈夫」と考えている愛煙家の方もいるようですが、それでも決して油断はできません。
実は血圧の測定法には、通常私たちが健康診断などで受ける上腕血圧のほかに中心血圧というのがあります。中心血圧とは心臓が血液を送り出した直後の血圧のことです。
南順一先生(獨協医科大学、現手島医院、広島県呉市)が行った研究調査では「喫煙者は非喫煙者に比べて上腕部の血圧が正常範囲であっても中心血圧が高く、循環器疾患のリスクが高くなっている」ことが明らかになっています。
こうしたパターンは、かえって始末が悪いとも言えます。
なにしろ上腕血圧の数値で安心している間に動脈硬化が深く静かに進行。いわば“だまし討ち”のような形で病魔に襲われかねないのですから。
実際、健診ではさして血圧(上腕血圧)も高くないのに、突然脳梗塞や心筋梗塞で倒れたというケースも少なくありません。