エネルギー安全保障という観点から見た原発の意義
ここで、エネルギー政策の基本理念を改めて確認しておこう。
エネルギー政策とは、「エネルギー安全保障(Energy security)」、「環境(Environment)」そして「経済(Economy)」の3Eのバランスであると言われている。この3Eのうち、特に重要であるにもかかわらず、平時にはとかく忘れられがちなのは、エネルギー安全保障だ。
エネルギー安全保障としてまず思い浮かぶのは、原油などの資源の安定的な確保であろう。この点に関し、原子力の果たす役割は大きい。燃料源であるウランは輸入に依存するものの、その資源賦存度は比較的分散している。また、ウラン燃料は数年間使用可能であるため供給安定性が高いことから、自給率の向上に貢献する「準国産エネルギー」として位置付けられている。
日本のエネルギー自給率は、原子力を除くとわずかに4%程度に過ぎないが、原子力を国産として考えると約18%となる。また、原子力をエネルギー源の選択肢に加えることで、エネルギー源の多様化が図られ、石油依存度を大きく引き下げることになる。こうしたエネルギー安全保障上の観点から、原子力政策は進められてきた側面が大きい。
ただし、エネルギー安全保障は、資源の確保だけでは成り立たない。電力を滞りなく国内に安定的に供給することも重要である。また、発電所や送電線などの設備の安全性を確保することもまた、エネルギー安全保障に含めるべきであろう。