いま、学生が被災地でできること 求められていること一緒にボランティアをした仲間たち

被災地の人たちに寄り添い、一緒に生活をしてきただけだ

――リフレクション会の中で、特に印象的な話は何でしたか

 とても印象に残っている活動レポートがありました。

 そのレポートに書かれていたのは、「自分たちがしてきたのは、ボランティアではない。ボランティアという言葉から、偽善を感じたり拒否反応をする方がいたりして、いろいろと誤解されることも多いけれど、僕たちがやってきたのは、被災地の人たちに寄り添い、一緒に生活をしてきただけだ。そういう感覚だった。」

 田舎のおじいちゃんおばあちゃんと話をしたり、甥っ子のような子供たちと一緒に遊んだりしてくるという感覚で行うものじゃないのだろうかというレポートを聞いて、なるほどなと思いました。

――現地に行くとどんなことを言われることが多いですか

 学生というのは、「頭が柔らかいとか、力仕事に向いている」というのが、「ウリ」だと思っていたのですが、よく言われたのは、「若い人が入ってくれるだけで元気が出るんだよ」という言葉でした。

 若い人がくるだけで勇気をもらえるし、若い人が頑張っているのなら自分たちも頑張ろうという気持ちになるんだよということを言われました。

「若さ」の強みを感じることは多かったです。東京に住んでいる方も現地にいる方も、学生が被災地に行っていることに対して「希望」のような感覚を抱いていただいているようです。被災地にいるおじいちゃんおばあちゃんにとって学生は孫のような存在であり、子供たちにとってはお兄ちゃんお姉ちゃんのような存在です。避難所に入ると、皆さん集まってきていただけるようなんです。おじいちゃんおばあちゃんも、学生に対してはいろいろ思っていることを吐き出しやすいようです。

 ただ、被災地に入っている学生はまだまだ少ないというのが現状です。なので、先ほど話しましたリフレクション会を大事にしています。被災地に実際に行った学生が地元や大学に戻ってしっかり活動を報告して、聞いた学生の意識を高めていくこともとても重要だと思っています。

ボランティアが1週間で交代すると、
吐き出したいことを、もう一度新しく来た人に話すことが出来る

――現地での活動は1週間なんですね

 2、3日だけだとなかなか信頼関係も築かれないまま帰ってしまうことになりますが、1週間も滞在していると仲良くなって帰ることができます。

 長期的なボランティアもいいのですが、実は1週間のボランティアならではの良さがあります。1週間で交代すると、被災者の方はまた同じことを話すことができます。吐き出したいことを、新しい人にまた話をすることができることで、胸につかえていることを、定期的に吐き出すことができるというメリットがあるということがわかりました。なので、1週間交代でも、継続して被災地に入っていくことが大切なのだと思います。

 とにかく、「ボランティアをしてあげている」という気持ちで被災地に入ってはいけないということだと思います。被災地の人たちが、言葉を発せられるまで待って、とにかくお話を聞くことが大事だと思いました。

わたしたちの経験が次につながっていく

 わたしがはじめて被災地に行ったときに、連れて行っていただいた方は阪神淡路大震災のときに、当時学生で物資の仕分けのボランティアをしていた方でした。今回は、その経験をいかして活動されたと聞いています。

 一度被災地でボランティアをした方は、次の震災のときにフットワークが軽くなるのだと思いました。その方は、阪神淡路大震災のときにつくられたネットワークを使って、すぐ動くことができたのだそうです。「被災地では子供の靴が不足する」ことがわかっていたので、すぐに周りの方に呼びかけて大量の子供の靴を集めて、被災地で仕分けしやすいようにサイズ別に分けて、同じ大きさのダンボールに詰めて、物資を送られていました。今回も被災地では物資の仕分けに大量な時間を使われていて、無駄に労力をつかってしまっているケースも多いと聞いています。

いま、学生が被災地でできること 求められていること東京都庁での物資の仕分け作業をする学生

 学生ボランティアの活動はわずか1週間ではありますが、この活動は必ず未来につながると思っています。次に震災が起こったときは、きっと経験した学生がイニシアティブをとって活動してくれるのではないかと思っています。また私たちの団体の活動も、ロールモデルとして未来につながっていくと信じています。

 

人に役立つことが自分のたちの幸せにつながっているんだ

――これから参加する学生に向かって、何かメッセージはありますか

 自分の1日や1週間、1年間を振り返ってみても、だいたい自分のことしか考えていないと思います。「自分が幸せになるためには」とか、「いい仕事につくためには」とかそんなことばかり考えていると思います。

 ところが被災地に行くと、人のために何かをしたいという気持ちになります。そのことが、自分の幸せな気持ちにつながっているんだなということを実感することができるはずです。私も、それが一番びっくりしたことでした。

 ボランティアだからといって、肩肘はって現地に行かないで欲しいと思います。
人に役立つことが自分のたちの幸せにつながっているんだということを体験してもらいたいと思います。今程、日本が世界中から注目を浴びているときはないと思います。この注目されている時に、日本の学生が頑張っていること、復興のために動いていることを、世界にアピールしていければと思っています。

是非、力を貸していただければと思います。